青春の終った日

青春の終わった日――ひとつの自伝


「青春の終った日」ひとつの自伝   清水眞砂子   洋泉社  ISBN:9784862483003 C0095



真っ当すぎるくらいにまっすぐな精神のかたちをしているのがみえる。
「努力すれば何でも可能だ。それが実現できないのは努力が足りないだけ」という立ち位置をずっと小さい頃から保ち続ける
ということはとても難しくもあるし、辛い事でもある。
かつ、ある意味とても幸せな青春時代を過ごしてこられたということでもあるように思われる。

著者はル・グインの「ゲド戦記」を翻訳した人、と行った方が分かりやすいだろう。「ダイハード」の原題ではないが、
「何事もそう長くつづくものではない。青春もそうである」という感慨に満ちている。
前述のような立ち位置をつきつめながら生きて行くことはある意味「青春の特権」ではあるけれど、とても苛烈なことでもある。
彼女の用に出来が良い訳ではなく、かつ根性も無く、主張も無く過ごした自分の青春もそれなりに苦しいものではあった。

人生の後半にある時代にこのような語り口でこのように静かに自分の人生をかたることが出来るということは羨ましい。
著者がゲド戦記を選んだのか、ゲド戦記が著者が選んだのか、とちょっと問うてみたくなる。


それにしても、アーサー・ランサムを翻訳した神宮輝夫の若い頃の話を読んでみたいなあ。師匠というか翻訳仲間でいらっしゃったんですね。