冬の薔薇

シューマンの指 (100周年書き下ろし)  冬の薔薇 (創元推理文庫)



シューマンの指」 奥泉光 講談社 ISBN:9784062163446 C0093

「冬の薔薇」 パトリシア・マキリップ 創元推理文庫 ISBN:9784488520106 C0197

芥川賞作家が書いたミステリー風青春小説といったら怒られるだろうか。とりあえず、読み始めたところでこの本がどういうジャンルにあたるかということを把握しておいた方がよろしいのではないかと老婆心ながら。
なにしろシューマンはおろか音楽関係に全く無知な自分のような人間が読み出すと、衒学趣味なのかなんなのか訳の分からない世界につれて行かれる心地して途方にくれたりする。はい、負けました。勘弁してください。
書評そのた非常に評判がよろしいこの本、それだけのことはあります。ミステリーとしてもなかなかなのではないか。と、奥歯にものの挟まったような言い方をするのは、シューマンの楽曲に関する評論がつまびらかに語られるこの記述に何処へつれて行かれるのか不安のあまり途中すっぽかして最後のネタばれ読んじゃった為です。
青春時代の過剰な自意識をシューマンの楽曲に対する分析に絡めて語られる進行はちょっと自分にはきつすぎた感あり。が、ここまでの濃密な世界を構築しているとういうことで、芥川賞文芸作家といえるのでしょうね。
おなじ「いやったらしい自意識過剰」といえばふと庄司薫を思い出すのですが、やっぱり一見分かり易く見せるという高度なテクニックで庄司薫の方が上手かもしれない。自分には向かない本でしたが、ここまでやれれば快哉というものでしょう。先日読んだ「音楽家と病気」の関係を探った本にはどう書いてあったんだっけ?シューマンという作曲家は。もう忘れている。

「冬の薔薇」
マキリップらしい作品なのだけど、なんだか不消化な感じの読後感。人物設定が凝りすぎたのか、配役が間違っていたのかよくわかりませんが。別に悪いわけでもないけれど、もっと良い作品に出来たのではないかと思ってしまった。
表紙の女性の顔をみていると気持ちがわるくなるのは、どこかバランスがおかしいからだろうか。ダ・ビンチの肖像画に似た感じの女性像があったような気がする。否あれはラファエロ?ともかくそれは気持ち悪くないから、多分こっちのデッサンが狂っているのでは?と要らぬ所が気になっていけない。