狼女物語

怪物  狼女物語?美しくも妖しい短編傑作選  水辺にて―on the water/off the water  小さいころに置いてきたもの  たてつく二人

「たてつく二人」 三谷幸喜 清水ミチコ 幻冬舎 ISBN:9784344019430 C0095

「小さいころに置いてきたもの」 黒柳徹子 新潮社 ISBN:9784103550068 C0095

「水辺にて」 梨木香歩 筑摩書房  ISBN:4480814825 C0095

「狼女物語」美しくも妖しい短編傑作選 G・マクドナルドほか 工作舎 ISBN:9784875024361 C0097

「怪物」 福田和代 集英社 ISBN:9784087714104 C0093



いやあ冗談で夫婦仲のことをつついていた清水サン、これからは洒落ではなくなりました。
相変わらず仲がいいのか悪いのか判らないこお二人のトークはやはり面白い。



黒柳徹子の文章はいつよんでも安定している。明確な話し方と、それと対照的なボケかたとが絶妙。
そうか、ナイターゲームは暗いからボールが見えないかもとか、イチローフアンだが相変わらず野球音痴だったり。(人のことはいえないけど。同じくらいサッカー判らん)
でも根っこにはちゃんと「まっとうな人生」を全うしている人の確固とした基盤が感じられる。高峰秀子さんといい、稀な克己の人でもあるのだなあという感じがする。


梨木香歩は、そう自分と歳ははなれていないのだけれど走破して行く距離と活動の広さに驚く。ファルトボートを車のうえに乗っけて、北海道の川、富士の湖、ダム湖と、相当の距離を駆け回る。その上でこの静謐にみちみちた文章を書くのだからいったいどんな方なのだろう。美味しい文章というものがあるならば、まさにこれ。


「狼女物語」
ランダムに読み始めて、ジェンダーバイアスがもろに満ち満ちた短編につきあたり吐き気を催す。が、さすがにG・マクドナルドの物語は逸品。後書きを読んで、バイアスぶちこんだ物語も、それはそれで意味のある提示であることに納得。
というか、後書きは「狼女」に関する歴史的思想の考察というか論文の性質のもの。
「嗜好として物語を読む」か「精神史の象徴として学問的に読む」かという選択の二面性が現れて来て、趣向としてもいったいこの本何を目指しているのか?と少々不可解。
その混乱は別にしてもなかなか良い物語が揃っていることは認める。表紙のロセッテイの絵が効いています。なるほどこの絵も「狼女」の主題だったのかあ!


「怪物」
しばらく取り置きをと思っていたのに、思わず手に取ってしまった…。ほんとうにこういうゴミ処理場あるのだろうか?
あると凄いぞ、真に迫っていた。物語的には最後のところの心理展開についてゆけず。そういうところがこの作家の特徴なのかと思いつつ、なにやら最後の最後でポーンとつきはなされてあっけにとられてしまうような。
まあいいや、高村薫の照柿のときほどではないし。