古代ギリシアのコンピュータ

アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ



「アンテイキテラ 古代ギリシアのコンピュータ」 ジョー・マーチャント 文芸春秋 ISBN:9784163714301 C0098



最近読んだノンフィクションとしてはかなり上位に値する面白い本。
お勧めですがしかしそう厚くもないこの本の隅々まで完璧に理解出来る人は少ないだろうなあとも思う。
なにしろ話は白亜紀の地層の形成の話からローマ時代の侵略の歴史、最新ではX線を使用したコンピューター解析にまで話題が及ぶ。

分野は地層学、冶金の実際から核物理学の基礎から勿論この器械の使用にかかわる天文学暦学、図形を使う数学にまで渡っている。これを読んでいると自分がどのあたりの「教養」を欠いているかがあらわにされてゆくようで苦笑をともなう。
出て来る名士はギリシアアルキメデス、ほかほかの科学者、ローマ字代の執政官?スッラやシーザー、ポンペイウスに、ロードス島の商人、その歴史を探る後世の考古学者、海洋考古物を引き上げたクスコー、リチャード・ファイマン物理学者他ほか、年代職業?もさまざま。今まで本を読んできてよかったなあと幸福な気分になれた。ローマは「ローマ人の物語」、アルキメデスはプルーターク英雄伝、核物理関係とか概要が脳裡に蘇って来る。


読み続けるうちに最近の研究者による成果のあたりで、突然「息子にコンピューター解析のソフトを入れてもらった」と云う記述がでてきてひっくりかえった。「あら、いつのまに現代になったのか」と思ったら、この研究者しっかり存命なのだった。

この研究者のあとに研究スタッフをあつめて大掛かりにプロジェクトをたちあげた大学教授が、大掛かりなスキャン装置を導入してコンピューターに画像を蓄積したという話になる。おおー!と感動するが、この時の装置の大掛かりな写真を見てまた絶句。この時の問題は、高電圧をこの器械が必要とするということと、資料一個につき画像のデータが1テラバイトあり、このデータを扱うことのできるパソコン周囲環境がないということだった、という記述に時代を感じる。(今なら1TBのHD市販している。よくは知らぬが扱うソフトも当然業務的には存在するだろうと思う。しかも何トンもの重量も必要もなく)


この研究は、解析技術の進歩をつぶさに感じさせるものであるという後書きが納得できる。というわけで、お勧めの一冊。だれかこのギリシアのコンピュータをソフトとしてつくってみて貰えないかしら。もうあるのかなあ。売れると思いますよ。


図書館に行ったらキングの「悪霊の島」が新刊書の書架にあったので攫ってきました。しばらく鳴りを潜めます(笑)