魔王とひとしずくの涙

朔太郎とおだまきの花   魔王とひとしずくの涙 魔法の国ザンス20 (ハヤカワ文庫FT)



「朔太郎とおだまきの花」  萩原葉子 新潮社 ISBN:4103168072 C0093

「魔王とひとしずくの涙」魔法の国ザンスXX  ビアズ・アンソニイ ハヤカワ文庫 ISBN:9784150205072 C0197

世の中には無惨すぎてコメントの仕様がないことがある。身内に虐待されて殺された子供の話などなど。というわけで、なんとも言いようが無いのだが、たしかにこれを描かねば萩原葉子は死ぬことができなかっただろうという感がある。(萩原葉子の遺作となった)
たしか女流文学賞を受賞した「イラクサの家」を受賞当時読んだ時は何がなんだか、何故祖母が孫をここまで虐待せねばならないのか皆目理解出来ずに終わった。今回読んでみてその「何故」は到底まともな共感は得られないものの、どういう状況環境に萩原朔太郎という人間が育ったのか。そしてその「つけ」が娘達にどういうかたちでふりかかったのかということが理解出来るようになった(とは思う)
このように劣悪な環境になければもっともっと才能を伸ばせたし、苦しむ度合いは少なくて済んだものをと思う。それにしても、なぜそこまで「父」をそこまで慕い深い愛情を抱いておられたのだろうと、こういう虐待にさらされながらその思いを失わずに済んだのかという疑問がずっとあったのだが、この作品を読んでようやく理解出来た気がする。これは収穫だった。
ファーザー・コンプレックス気味を呈する森茉莉幸田文萩原葉子壇ふみと、文豪の娘達の姿を知る度に、なんだか不思議なような羨ましいような気になるのは、それはこちらの事情によるものかは。

魔法の国ザンスシリーズ最新刊!
いまだに進化しつつ有るザンス王国。今回は死すべき珍妙なドラゴンに帰られた魔王ザンス自身のお話。マンダニアからRVに乗った家族御一行も大活躍。安心して読めるコメデイでもあり、ちょっくら教訓という薬も潜んでいる。どうこう言う前に読んでみるべし。