海竜めざめる

フリーター、家を買う。  平成お徒歩日記  海竜めざめる (ボクラノSF)  運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)




「フリーター家を買う」有川浩  幻冬社 ISBN:9784344017221 C0093

「平成徒歩日記」(へいせいーおかちーにっき)  宮部みゆき 新潮社 ISBN:4103750030 C0095

「海竜めざめる」 ジョン・ウインダム 星新一訳 福音館書店 ISBN:9784834024234 C8097

運命のボタン」  リチャード・マシスン 早川書房 ISBN:9784150412135 C0197

日経丸の内officeというのがどういうものかは知らねど、たしかに冒頭は余りに切実で暗い。
が、よくまあここまでリサーチなさったものだとそのリアルさに感心する。たしかに、シュウカツというのは採用する者とされる者のたたかいでもあるのだ。採用する側に立ってみれば当然のことだと納得がゆく。履歴書の字にどれだけの気合いが入っているかとか、いい加減な書き方をすれば即雰囲気で分かるものだ。昔会社の事務で郵便物も開封していたから、そこのところはよくわかる。

ご近所の中での苛めなんかも心当たりが無きにしもあらず。どうしても「浮いたヒト」というものは居るもので、その人にたいしての扱いが何かの拍子に辛いものに加速して行くというのもままあることのように思う。(というより自分の経験か)

後半から恋話になって、図書館戦争パターンのようなことにはなっているけどそこでちょっと息抜きが出来る。仕事にたいする向き合い方など、納得のできる言説があってそうだそうだと同意しながら読んでいたりした。お勧めです。いったい「仕事」って何だろうなあと改めて考えるに良い機会かもしれない。


宮部さんのは、赤穂浪士が仇討ちをした後どういうふうに江戸の街を歩いたか、など旧地図と照らし合わせながら現在の街を(ほとんど)徒歩で歩いてみるという企画。あいにくと極寒、極暑の季節に実施するはめになって四苦八苦の宮部さん。「市中引き回しの上獄門」というのはどこを回ったのか、という企画が印象的だった。かちかちの「史実を検証」とちょっと言い難いところがご愛嬌で楽しく読めます。


「海竜めざめる」は、SFの巨匠ジョン・ウインダム星新一の訳で。
大森望が現代に合わせて少し手を入れたそうだが、さすが名作このリアルさには脱帽。中学校の頃家の本棚にあったかもとは思うのだが、ウインダムの作品は「トリフィド時代」?を含めて読んだ後で本当に夢馬が悪夢を運んでくる。
特にトリフィドの方は映画を見て随分うなされたと言う、ドラキュラ伯爵と双璧をなす作品だった。呪われた村も怖かったけど、このパターンはジャック・フィニイの盗まれた街の方が僅差で勝っていたかも。この作品は今読んでもというより、今読んだ方がより怖い。あまりに「ありえる世界」になってしまった現代なのだ。


運命のボタン
映画がそろそろ公開されているらしい。そのせいで表紙にキャメロン・デイアスがついていた。たまたま今回違う表紙のを見つけたので選びました。金髪女性をあまり見たくないという変な性癖がある。(理由は知らない)で、なかなかこの表紙が良い。

やっぱり怖いぞ。「戸口に立つ少女」などちょっと画像化されても恐ろしくて見れない。で、いちばんサイコなのが「子犬」。これは耐えられず途中すっとばした。(おい)
本当に「プロフェッショナル」の作品集。作家でもありかつ映像作家としての比類のない。そういえば、「地獄の家(ヘル ハウス)は映画も原作も名作なのでありました。未読の未見の方は是非。夜うなされること請け合い。