誰も書けなかった石原慎太郎
「誰も書けなかった石原慎太郎」 佐野眞一 講談社 ISBN:9784062762472 C0195
流石に読み応え有り。衆議院選挙の最中だからこんなのを読んでいるわけではございません。単に鳩山さんを読んだら次にこれが目についたというだけ。同じ著者なのは偶然。ノンフィクションは沢木耕太郎さんタイプが好みの自分でありますゆえお間違えのなきよう。(何の間違い?)
解説にもありましたが、これはもう明治大正昭和平成の歴史大河ルポルタージュでありまして、石原家というより日本社会の近代史の一片を切り取った非常に面白いものであります。でなきゃあ、さすがに文中でも言っているように「千枚にわたる」というくらいの大分册を読める筈は無い。
郵船関係の話や政界のつながりやもろもろ、この石原慎太郎、石原裕次郎兄弟を語ることはすなわち「大衆が望むもの」の移り変わりを語ることでもあったというところの言説は非常に興味深い。
自分は日活東宝映画の最盛期とは少しずれた時期に育ったものですから多少は冷静ではありますものの、「太陽にほえろ」はリアルタイムで見ていた年代です。なるほど、と分析はあたっているような気がする。
芥川賞全集で「太陽の季節」は読んだ筈だが特に印象なし。他に読んだのはTV青春ドラマのハシリだった(夏木陽介が先生役)「青春とはなんだ」の原作だけか。ということで文学的価値とかはなんともいえないけれども。東京都知事でありながらえらい暴言繰り返しているらしいこの石原慎太郎というひとが少しは分かったような気がする。
もう一回「石原家の人々」を読み返してみるかとちょっと考えた。慎太郎さんには非常に腹立たしいだろうが、この本読んで損はなし。