いとま申して

『童話』の人びと いとま申して  遊びをせんとや生れけむ



「ねじまき少女」 バオロ・バチガルピ 上 早川文庫SF1809 ISBN:9784150118099 C0197

「ねじまき少女」 バオロ・バチガルピ 下 早川文庫SF1810 ISBN:9784150118105 C0197

「いとま申して」 北村薫  文芸春秋 ISBN:9784163299204 C0093

「遊びをせんとや生まれけむ」 久世光彦 文芸春秋  ISBN:9784163718408 C0095

今回はいずれも、最後まで読み終えられなかった本のラインナップになってしまった。

ねじまき少女。たとへば。「村の入り口に<門>のつもりなのか鳥居が立っていた」(ラストサムライ)とか、「大本営に赤い鳥居が。そして作戦検討用テーブルの天板は<竹の簀の子>だった」(パール・ハーバー?)とか、「一般の日本家屋にありえない宝塚舞台並みの大階段」(キル・ビルだから仕方ない)とかはなんとか引き攣った笑いで飲み込んで誤摩化して来たのだけれど。
どうもこの本どこか自分の「鬼門」に触れたらしい。てなわけで、口からボロクソな突っ込みが出たがって困ってしまう。
多分「タイ」とか「中国」とか「日本」とか具体的なイメージの名前をつかってしまっているせいで余計に気に障るのだと思う。「タイ」に設定しなければよかったのにね、どうしてもそうしないといけなかったのだろうか?
まあ、ノーベル文学賞受賞の?「ソーネチカ」読んで吐き気を催してしまった人間のいうことなのでそういうものかとお思いください。米国の有名な賞を三つも獲ってしまったという一般には絶賛の作品であります。

「いとま申して」
北村薫氏の曾祖父から父親へといたる人生を時代の流れとともに語りつつという本。なんと江戸時代からの話で、曾祖父は医者、父親は旧制中学校時代から同人誌を発刊するという文学少年。雑誌「童話」で投稿を競ったのは淀川長治とか、出て来る人物錚々たる方ばかり。
図らずも「パンとペン」に連なるような時代に沿った本の選択となりました。まだまだこれから話は続きそうなのですが、ひょっとして金子みすゞが先には出てくるのでは、なんて言う気がします。読みながら、こんな豊かな親子関係のなかで北村氏は育ったからこんな暖かい文章を書けるのかもしれぬと感じました。

「遊びをせむとやうまれけん」
こちらは威勢のいい、というより殺伐とした旧制高校時代をすごした久世氏の若き日の思い出。テレビ創成期の勢い奇談珍談が。もちろん名作となった向田邦子とタッグを組んだ番組の裏話も。人前とか食事しながら読んだら酷い目にあうこと間違いなし。ご飯が吹き出ます。それでもしんみりしするのは、ここに出て来る人々のほとんどが(そして著者も)鬼籍に入ってしまっていることを考えてしまうから。内田裕也って怖いかも…