麗子像

先日高松市高橋由一の「鮭」を見に行って、今回は岡山県立美術館にて「鎧」を。偶然ですがちょうど明治維新のドタバタのなかで生きていた人たちの絵の話を見学することになりました。

岸田劉生の父岸田吟香と、隆生、その娘麗子という三代にわたる時代を主題とした企画展。勤王の志士をやっていたという天才児と言われた男が、身分を隠して頭脳だけを切り札にさまざまな職を転じて世を渡り70歳あまりで巨万の富をつくり子供は16人?という波瀾万丈な人生を生きる。兄弟姉妹の中では下から数えた方が早い隆生は16歳で両親をなくして経済的に逼迫して中学中退するも画家を目指して独学、画家として売れっ子となったその最中38歳にて急死。麗子は父の親友だった武者小路実篤を頼り舞台女優、画家、文章家として活動するも、本格的な活動はこれからという48歳にて死去。

吟香が高橋由一と親しかったということで「武者鎧」が展示されていました。技術的にはとても丁寧に描かれていて好印象はあるけれど、現代の油絵として見たらレベルとしてはさほどでもない感じ。が、先日の明治期の油絵挑戦悪戦苦闘の歴史を加味すると、この時代でこのレベルまで描けるようになったのかと感慨深い。

岸田劉生はいまから脂が載ってくるという時期に突如断ち切られたという感が大きい。麗子像と静物画はやはり傑作だと思う。未完下塗り状態の作品があったので興味深し。やはり背景は赤の下塗り。完成品はきっと黒になったことだろうと思われ。決して天才肌の作家とは言えないし黒田清輝などの派手さはないけれども迫力は相当なものがあり。
麗子は多分日本画の方が性格に合っていたと思われる。

何という本でしたっけ完璧に忘れておりますが、岸田劉生の伝記読んだ筈なんですけど。
薄暗い部屋で麗子像は見たくないよなあ、としみじみ。