負ける建築

負ける建築 // 華族夫人の忘れもの 新・御宿かわせみ

「負ける建築」   隈研吾(くま けんご)   岩波書店  ISBN:4000021591 C0052

華族夫人の忘れもの」新・御宿かわせみ  平岩弓枝  文芸春秋 ISBN:9784163274904 C0093


こういう本も珍しい。これも一種の「巨人」かなどと思いつつ。建築史の観点がおもしろい。惜しむらくはこれを検証、確認するだけの知識と経験とアタマを自分はもちあわせていない。にしても、これは「定説」なのだろうか?ともあれここまで門外漢の自分にはチンプンカンプンのカタカナ語、人名、建築様式ならべたてられてしかも読んでいるうちに頭の中にイメージがしみ込んで来るという文章と言うのは、いままでいくつあったことか。感心する。


これも自分の頭脳で考えたことを、こなれた文章で語っているせいなのだろう。比較したら怒られるかもしれないが、立花隆に似て非なるもの。この人には知識量による恫喝は必要ないんだろうなあと思う。
絶えず知識を補充せねばならないという強迫観念に追われるかたちでの著作は、その取り込みが困難になった時点で倒壊する。自分のアタマで考え抜いたものを著作にしたものは、時系列としてともすると遅れをとるかもしれないがやはり強いかもしれないと思わされる。ここで立花隆を出すのは不当か。一般論で充分かな。


気がつけば既に月末。遠出の所用があったものでばたばたして体力を消耗してしまったらしい。
先々週から体調優れず、ついでに本を読む気力が出てこない。秋場はいつもこういう傾向が激しい。
すべてが、いやになってくる。
というわけで図書館に出る機会を失して、久しぶりに行ってみたら「御宿かわせみ」の新作。
東吾は行方不明、畝さんは亡くなって…淋しいがきっとひょっこり登場というのはありえない。ちと暗くなる、が仕方なし。なにかほっとする話が欲しかったので助かった。