学資金の1

たまたま手元にある「坊ちゃんの時代 第二部 秋の舞姫」によれば、明治42年入社の石川啄木の月給25円夜勤手当1円、同じく朝日新聞入社夏目漱石は月給200円。

啄木に至っては経済観念ゼロと言われた?人だし、漱石は双方の実家まで養っていたのでそれが金銭の判断には尽き難いが、子弟に400円位の資金を投入する余裕となるとやはり資産家ということになるのだろう。

ちなみに最近自分としては「米一升」の値段を目安に、というのが信じられなくなって来ている。なにしろ昭和初期の「おしん」の望みは「白飯」ではなく「大根飯」を腹一杯食べたいのが夢という感覚である。住井すゑの「橋のない川」は「目玉が映るような粥」が常食、先日読んだ「在日一世の記録」に至っては餓死寸前というのを読んでいると、米価を基準とする感覚が信じられなくなって来る。

ちなみに上記の中に、二葉亭四迷外国語学校でロシア語を学び、「常日頃丁稚学校と軽侮していた商業講習所に併合されることを士族の子弟としては耐えがたい」と退学したと書いてある。これは「商業高等学校」のことだろう。なかなか興味深いはなしである。

5.7 本校生徒在学中学資金予定額
(2号 87頁〜89頁)
(明治31年3月調査)


一金367円63銭  在学5ヶ年間学資予定額


内訳
一金297円  (甲)五ヶ年間平常月費総額
一金34円43銭  (乙)同書籍費総額
一金36円20銭  (丙)同被服費総額
此三項を詳細に分ては如左


(甲)平常月額
一金59円40銭 (1ヶ月5円4銭と定め而して8月1ヶ月分休業不用に付11ヶ月を積算したる総額)之を1ヶ月に分てば次の如し


一金5円40銭   1ヶ月総額
(備考)寄宿舎竣工の上は下宿を廃する見込につき平常月費は凡そ寄宿生により積算せり但寄宿舎満員の場合に於て下宿せしむる者は幾分の増額を要するなるべし

内訳
一金  70銭  授業料
一金3円60銭(1日金10銭の割)  食料
一金10銭    寄宿舎費
一金1円    課業用物品費修理費校内諸会費其他日用費


(乙)在学五ヶ年の書籍費
一金34円43銭  五ヶ年総額

内訳
一金7円50銭  第一学年書籍購入費
一金6円89銭  第二学年同上
一金3円67銭  第三学年同上
一金4円35銭  第四学年同上
一金7円02銭  第五学年同上
一金5円     図引器械字書其他参考書費

(右は書籍の定価により計算しあるものなれば、売価に於ては多少の変動あらん、又図引器械字書及参考書類は、 毎学年凡そ売価宛と見込たり、