熊本第五高等学校運動部の2

いわゆるボート部です。いろいろ内紛があって環境が整わないとの嘆き。同窓会などからつきあげもありいろいろうまくゆかないと。これは何時の世もおなじか。

端艇部
此の部元と艇庫所在地の不便なるため創設以来甚だ不振なりしが昨年委員其人を得しため意気頓に揚り昨夏に至ては非常の企画をなし外は九州各藩士を初め有力者の賛成を得内は教員凡て応援者となり各生徒の父兄よりは応分の損金を仰ぎ数千円を投じて一大規模となさんとせしが

当時其の予画の整然たりしものありしにもかかわらず中に新事業の起し難きは何処も同様今日に至るも尚未だその浚
功を見ざるのみか当初の元気も稍消になむとしるの傾向をなせり


これに就いて思へらく先に御校同窓会に於て会員諸氏と計り身の無能をも顧みず遽に不相応の企画をなし四方の抗撃を受け一年有余の長日月を費し漸く憐むべき二艘の姉妹艇を造り得し事


当時心中陰に恥づる所ありしが今日我校の如き六百の生徒然も吾人の尋中時代に比すべからざる学識と能力を具ふるもの相集まり加ふるに教員は手強き応援を与え各藩士は強力の補助をなすにも拘らず猶遷延一年余に至り尚且この成功の緒だに見えざ
るものに比すれば何等の大事業なりし事よ。


当今当部に属する端艇は総計五艇にして三艇は競争の目的を以て明治28年に新造せしものにして今日ははや老朽殆んど用に堪へ難きも新艇の之に代るべきもの未だ峻功せざれば?々修繕を加へてこれを使用し現に本年春期大競争会の如きも全く此の艇を用ひたり

他の二艇は佐世保鎮守府に請ふて無期限借用の許可を得たるものにて12挺14艇の大艇なれば平素は江流の如き小湖にて漕艇し難く只遠洋航海の用に供するのみなり
若し幸いに熊本にして松江の如き大湖を控かゆるの地なれせば此の二艇の時めく事は幾何ぞやとは常に吾人の嘆声なり。