東京工業学校の1

商業学校を「丁稚学校」と言ったらしい二葉亭四迷ならば、この学校は「徒弟学校」とでも言ったかもしれない。今回から暫く「工業学校」についての記事を掲載してみる。非常に興味深い。まずはその創設の目的から。

3.6 東京工業学校略況 野白金一

(4号 54頁〜58頁)


沿革

本校は文部省直轄にして明治14年の創設に係り当時東京工学校と称す爾来幾多の変遷を経生長して遂に23年名を現今の東京工業学校と改め今日に至れり当時其の職員は校長(勅任)1名教授17名助教授(判任)32名其の他知名の講師ありて教授を擔当せらる而して昨年より継続5年間にて3倍に拡張するに決し現に其の最中なり



目的及び主旨

本校の目的とする所は徒に高尚なる学理の奥蘊を極むるに非ず又学理少なき職工を養生するに非ずして工業に従事しるものの為めに必要なる学理及び実地の技術を教授するにありて学理と実地と駢進して遍せず能く社会に於ける工業の実地的学理応用を期するものなり
故に其の課業時間の凡そ3分の1(1年より2、3年に至るに従て実修時間は増加す)は工場実修に従事す而して工場実修は学理を実地に応用して種々の製作に従事するを以て非常なる趣味を有し且つ卒業後実業従事するに際し偉大なる巧果を有するものなり