食べられる女

天才シェフ危機一髪  被取締役新入社員  食べられる女



「天才シェフ危機一髪」 世界一流レストランの舞台裏で起きた40の本当のお話 キンバリー・ウイザースプーン アンドリュー・フリードマン 日経BP社 ISBN:9784822247058 C0098

被取締役新入社員」    安藤祐介   講談社  ISBN:9784062141918 C0093

「食べられる女」   マーガレット・アトウッド   新潮社   ISBN:4105225022 C0097




シェフという人種?はこんなに奇人が多いのか、と思わされる一冊。幸いにというか生憎というべきなのか、普段外食といっても「蕎麦屋」がおおい身の上ではかような状況には遭遇した事が無い。そういえば先日行った蕎麦屋はやたらと客が入っていたために、注文と配膳のおばさんは疲労困憊きりきり舞いしていた。
それも「修羅場」のひとつではある。顔なじみになるほどに通っているわけではないが、愛想のよいわけでもなしかといって事務的でもないこのおばさんの応対が、肝の細い客である自分には楽でなにより当然ながら此処の蕎麦は名物のひとつなので
まあまあ良く行くのだ。


松江市街には家族営業という蕎麦屋も結構有って、蕎麦屋地図など作るからと言ったら「そんな宣伝されたら客が多くなって馴染みの客に迷惑だ」とかで宣伝してくれるなというお店もあるらしい。

あ、話はずれたが期待した程にはコミカルではなく、まことにシェフの誇りと土壇場の修羅場を描いている(=醍醐味なんだろう)点で面白かった。

被取締役新入社員発想の転換のたまもの。人間の心理をついている。これは「会社」に限らない話ではあるが。だれかをスケープゴート(生け贄のヤギ)にすることで集団の結束を図るという、意識していない集団の心理方向。生け贄にされた方はたまらない。それで給料が役員並みならどうか、というはなしだがまあそれはありえないとして。そこのところをコミカルにかいてくれた面白さ。たまにはこんなので息抜きでもせねば、って生け贄にされたことのある人間にはちと苦笑ものではある。楽しかったです。


マーガレット・アトウッドの処女小説?であるこの本、コメデイになっている。これも笑えるか否かは別にして。アトウッドらしいグサッとくるような設定というか深みというか。沈潜した風味が無い分わかりやすかもしれない。が、ただ突然読んでもどう取って良いか理解しがたいか。素直には笑えないけれど、充分可笑しかった。人間の矛盾って大真面目になればなるほど可笑しい。