高等師範学校の2

社会人経験者や既に世帯持ちの学生がかなり交じってさまざまな学生が居る。高等学校としてはかなり特殊な環境である。その分、変な縄張り意識とか上下関係というのはないらしい。ところでロンテンスとはなんぞや。ちょっと検索してみる事にしようか。(附記 ロンテンス=ローンテニス=テニス ですね多分)

我校にある島根県人は、理科に2人(ニ中卒業)、文科に1人(師範卒業)、英語専修科に、牧戸齢、錦織甚六の両氏、、尚、理科の物理化学部に、新田亀太郎氏、地理歴史専修科に小生有之、都合同県人は、7人丈に御座候7人に相成候も、今年の事にて、小生入学の時は、島根県人は、小生のみといふ有様にて、不面目を極めし事も有之候。


さて、前申上候如く、学校は至って手狭に候ゆゑ、第二の校舎有之、本校とは、20分もかかる程、離れたる處に御座候。両處共、官費生の寄宿有之、自費生は皆、下宿より通学致居候。かくの如く候へば、種々の運動は、殆ど寄宿生のみ致居候、運動部には、柔道、撃剣、器械体操、ベースボール、ロンテンス、フートボール、角力、ボート、弓等有之、各教授部長となり生徒委員となりて、夫々運動を致し居り候が、ロンテンス最盛に御座候。


之に反して、同構内なる附属中学にては、ベースボール最盛に御座候。時間と時間との間の休みにも、ボールを投げやり受取り、常に稽古に油断無之、又、器械体操も熟練致居候。御校近頃は、如何なる運動が、最行はれ候や。往年の如く、中海一周、宍道湖回航の、勇気と熟練とを備へたる、健児有之候哉。よく力めて、よく遊ぶ事を御忘れ無之様、希望致候。


生徒は案外に活気を有し居り候。其年齢は、三十三四の人もあれば二十代の人もありといふ工合に候故、其考も色々に御座候。我地理歴史専修科は、平均27年何ケ月にして、最高に御座候。或は、10年位も教員をなし、或は子息も両三人有する人少からず候ゆゑ、小生は乳臭の若輩として、君は若い若いと、人々より申され候、若いと申しても既に23に有之、徒に年を重ね候のみに御座候。かく年齢隔絶致居り候へ共、君僕の語は用ひられ、上級下級の区別は無之、皆平等にして、所謂師範堅義は無之様存居候。


大抵月々1回寄合会を開き、知名の士を聘して、談話を聞く事も有之候へ共、此会の目的は、互に懇親を温め、忌憚なく欠点を忠告しあひ、品行其他を改良するが、主眼に御座候。小生御寄宿舎にありし時は、土曜日毎に談話会を催し候へ共、菓子等のある時にのみ、出席者多くして、常々遺憾に存じ候が、近来は如何に候哉。