無伴奏ソナタ

無伴奏ソナタ (ハヤカワ文庫 SF (644))


無伴奏ソナタ」  オースン・スコット・カード  ハヤカワ文庫SF644 ISBN:9784150106447 C0197




たまに「生きていて良かった。こんな本を読めるんだから」と思える本がある。「タフの方舟」を書いたマーテインを読んだときもそう思ったのだが、このカードの「エンダーのゲーム」(長編)にであった時もそう思った。
その原型である短編版(こちらが先)がこの短編集に収められていると知り、ずっと読んでみたかった。で、結論。短編をどのように膨らませ長編とするか、ということにおいて非常に示唆的な作品だった。
もちろん概要は長編を読んでいるから初めて読んだ時の衝撃というものはなかったがしかし、本文においてほとんど修正がなされていない分設定の微妙な違いが読者に対して全く違うことを感じさせ、考えさせるものであることをはっきりと提示してくれる。


設定の違いの詳細はお読みになる方ご自身に任せるとして(ネタばれほどいまいましいものはない。こういう場合)、カードが提示したかったもの?の焦点を、よりはっきりさせているのはやはり長編の方だろうと感じられる。小さな事項の違いではあるのだがその効果はめざましい。そしてそれがシリーズ化につながってゆくのだが。



マーテインといい、カードといいまったく食えない作家である。(これは褒め言葉)この短編集におさめられた他の短編の特異さというかその感触はなんともはや。
「さしずめ、おめえ天才だな」と寅さんじゃあないが言ってみる。