カメレオンの影

The Chameleon's Shadow


「THE  CHAMELEON'S  SHADOW」  MINETTE WALTERS  PAN BOOKS ISBN:9780330449557 


とりあえず読了。ミネット・ウオルターズはゆがんだ人間関係を書かせたら天下一品という作家で、今回は「愛とは何か」と言う問いを読者に突きつけてきます。
中心人物のオークランドという若者は、徹底的に嘘で塗り固められた家族環境の中で育った為に「愛憎こもごも」という関係が理解できません。相方が経営するパブでオークランドが騒動を起こした事から彼を放ってゆけなくなるジャクソン女医は、彼にちゃんとした関係ならば「言い争う」ことはあっても、「目の前が真っ赤になる」ような感情(=我を忘れて相手を叩きのめす=血の雨を降らす?)には襲われないものであるという説明をします。

初めの頃は人から触れられると極端な拒絶反応を示し、つつかれただけで相手を叩きのめすという衝動を抑えきれないオークランドは異常に見えます。それが、だんだんと「本当に異常なのは彼か、それとも…?」と思え出すところはなかなかの圧巻です。

ゆがんだ愛情、ねじれた人間関係、いくつもの様相が示されるにつれて、「愛情」とは何だ?と言う疑問が頭の中をよぎり始めます。辞書もひかずに眺めているもので一向に語彙も増えないし速読も成りませんが、楽しめました。

そろそろキャロル・オコンネルの「BONE BY BONE」がペーパーバックとして発刊される7月が近い。
がんばって手に入れよう。マーテインの氷と炎の剣シリーズも出てくるかしら?