琵琶湖遠征紀行の6

今日のつっこみ所は、同志社が応援歌?として「賛美歌」を歌っているというところ。
あきらかに勇ましくなさそうな気がします。
他の項から得た情報では、この端艇競漕は大日本武徳会というところが主催して剣道部や柔道部の仕合も行われた様子です。よってその仕合が終った部員たちがちょうど折よく応援に駆けつけることができたということのようです。

ともあれ松江一中は同志社に快勝、昨年の恨みをようやくはらす事が出来ました。
ところで筆者はもう一つのチームで戦います。これが第八回の仕合。

第一回第二回第三回は終りぬ、いざや之より評判一の同志社と昨夏の失敗に依って奮慨の念に堪へず骨を粉にし身を砕き以て必勝の練習に腕鉄の如き島一中の第一選手とのレースとなりぬ、白は一中!赤は同志社!勝は何れ?敗北何れ?艇は将に汽船に曳かれて出発点に至らんとす、


時に京都より撃剣並びに柔術の諸子来らる、時よかりきと互に見送る我等が心中果して如何ぞや、折しも遥かに聴ゆる同志社軍に称ふる賛美歌!我等は益々怒りて勝を一中に祈りぬ。


今や艇は軸に定りし様子、今や打つ今や漕ぐと見る内に砲声万雷白煙昇るや十二のオールは一時に水中につかり艇は矢を射る計りに進み出でぬ、白はスタートに於て少し遅れたるやうに見えたれど直ちに敵を抜き返す事凡半艇今や両艇は互角の勢にて進む、されどバック無き彼は六百メートルを過ぐる頃少し遅れぬ、


されど尚白は体度を緩めず、一中独特の美事のスタイルにて進むにひきかへ赤は既に此頃より漸く疲れの色見え一艇身二艇身決勝点の近づきに従って遅るる益々大、此時白艇期至れるにや敵の弱り果てしを見て一生懸命日頃鍛えし鉄腕を示すは実にもここよと進む其勢は猛虎飛竜も尚及ぶ可からざるの慨ありき、


されば両艇は決勝点の近づくと共に其差愈々大となり加ふるに終りのハード美事其功を奏せしかば僅々五分十九秒にて勝は目出度一中第一選手の手に落ちぬ、敵はいかにと見るにまだ決勝点に入らざる其差は実に四艇身、

吁快なりなり我島根一中は遥々遠征に来りし甲斐あって老練にして体格大なる評判一の同志社軍を一戦の下に顔色なからしめたる、其功重く其名誉実に大なりと云ひつ可し、快ならずや本年のレース劈頭第一に先づ島根の大勝利続く勇士に何の劣か之あらん、

此に勇気は百倍し我敵何ぞ恐るる事あらんと待つは、第八回の来らん事のみ