仮想儀礼
「ゴールデン・マン」 フイリップ・K・デイック ハヤカワ文庫SF1655 ISBN:9784150116552 C0197
「ひよこはなぜ道を渡る」 エリザベス・フェラーズ 創元推理文庫 ISBN:4488159214 C0197
「自殺の殺人」 エリザベス・フェラーズ 創元推理文庫 ISBN:4488159176 C0197
「仮想儀礼」上 篠田節子 新潮社ISBN:9784103133612 C0093
「仮想儀礼」下 篠田節子 新潮社ISBN:9784103133629 C0093
「自負と偏見」上 ジェーン・オーステイン 中野好夫訳 新潮文庫
「自負と偏見」下 ジェーン・オーステイン 中野好夫訳 新潮文庫
またまた本がたまってしまった。じわじわと梅雨に体力が浸食されているのか。
「ゴールデン・マン」
どうしてもデイックを最後迄読み終えられないという既成観念が今回は打破できた。
表題の作品ゴールデン・マンはとくにおすすめ。この人の作品は難解で有名のようだが、その理由の一つにこの人の資質が 「突出したストーリーテラー」ではないというとこにあるのかもしれないと思った。
まあ、同時代にハインラインなんかを持ってしまった不幸もあるのかもしれないが、基本的に自身の妄想、或は幻想、あるいは(本人の言う)体験が色濃く反映している分そこのところを説明するのに読者にとっては説明不十分みたいなことになるのかもしれない。
とはいえ、さすがにSF界の大御所なるところを垣間みることができた。
そういえば、ラジオ番組「アバンテイーニ」で村上春樹の「1Q84」の特集をやっていましたが、ジョージ・オーウエルの「1984」のオマージュみたいな形なのでしょうか。
パラレルワードの世界らしいですが。村上春樹は多分読まないとは思いますが、イギリスでは「1984」が統一試験に出るので必読書に入っているとか言う話で驚きました。英国文化の厚さを感じさせる話だと思います。
エリザベス・フェラーズは軽めの感じの表紙の印象を完全に裏切り本格推理のお手本。本格推理小説をお好きならば満足できる作品です。
イギリスの女流推理作家の層の厚さが体感できます。みのがせない二冊。
他のも探してみよう。
「仮想儀礼」はコメデイであり、ホラーであり、かつ何だろう。「宗教団体の作り方ノウハウ本」ということはないわなあ。
完全失職した男二人が資本なしに金儲けできると立ち上げた「新興宗教」。
ヒーリング(癒し)をテーマにしてゲーム感覚で宗旨論理をでっちあげ、なんとか「商売」は繁盛しはじめたのだが…
次第に社会組織の中で落ちこぼれた人々に占拠され、しかし自身の「常識的倫理観」からその集団を排除するほどの冷酷さを持ち得ず、
どんどんと深みに入って、はては金にむらがる悪徳業者やそれにつながる悪徳政治家の脅しに脅かされ、ついでに税務署から脱税を追求され…
などという顛末ではございますが、宗教団体の裏金つくりやその他のノウハウ満載という大変ためになるエンターテイメント。
だからといって、宗教団体つくってみようなどとはゆめゆめ思われませぬように。
宗教にすがってくる市井の人々の姿があらわに、そして社会の矛盾のなかで辛苦する姿が切実に描かれている社会派作品でもあるのです。
ついでに、古今東西あらわれる「新興宗教」も同じ手を極悪非道につかって大きくなった可能性が充分にあることを念頭に置いていた方がよいという警告でもあります。
最近政党を立ち上げた宗教さんも、そろそろ教主の手を離れて側近が暴走し始めているような気がしますが気のせいか?
と、本当はごたごた言わずに一読をおすすめします。徹夜本でありました。
「自負と偏見」
図書館で「高慢と偏見」と探しても出てこないのですな。なぜ映画の題名の方で覚えているんだろうという不思議は横に置いておいて。
先日キーラ・ナイトレイ主演の映画をテレビで垣間みて、漸く読む気になりました。
ていうか多分近い過去トライしてはみたものの読み続けられなかったような記憶がある。
エリザベスとダーシーの心変わりよりも、もっとふしぎな心境の変化であります。
かなり面白く読めた。というのもこりゃあ、進歩なのかもしれない。
オーステインを読めればそのうちノーマン・メイラーとか米国現代作家も読めるようになるかもしれない。
が、その必要性はあるか?まあ、微妙なところであります。