武徳会の剣道試合の3

武徳殿の用意が出来ていないということで仮の練習場となった、京都第一中学校の道場の説明です。
図は今回示しませんが、大まかにいうと四角が横に二つ並んでいて左が柔道場、右側が剣道場です。
剣道場の内側四方にめぐるようにしてイロハニホヘのスペースがあります。トの入口は右側の四角の右下に突出して設けられています。
百組の面、小手が並ぶとなるとかなりの大きさかと思いますが如何。
規律もかなり厳正に守られていている由、「剣道」の「道」が似つかわしいかたちが整ってきているということでしょうか。

1日は多久和先生の周旋にて京都第一中にて稽古する事を得たり、曾て小松総裁宮殿下の随従として当地に来られし内藤高治先生師範たり。

吾々は当日は遠路の珍客として迎へられき後、内藤先生の指揮のもとに、長野同校及び本県三校の混合一本試合あり、後学のめ、大に資する処あり、吾人は同情の念厚き同校の撃客諸氏に謝するものなり。語る処、多少岐路に入るといへども、聊か同校撃剣部の状況に付て語らむとす。


同校は市の東北部にあり、大なる建築物と、廣闊なる運動場あり、道場は、其の東部にあり、面積より比較する時は、本校雨天体操場の約二倍程なりと思考す。(注 配置図あり)

1、柔道稽古場
2、撃剣道場
 イ 道具設置場にして、無量百組の面、小手整然として毫末も乱れず。
 ロ 来覧者の為めに設けたる所の如く,(ハ)より稍々低し、畳を敷く、(黒線を施せる処皆然り)
 ハ 同所は常に師範の休息所の如し火鉢より茶器に至るまで総て其設けあり。
 二 水桶等あり、総て土間なり。
 ホ 1と2との分区場にして一段高く両場員休息所たり。
 ヘ は高く(ロ)に等し、稽古着及び竹刀或は師範の道具設置場に当つ。
 ト 其入口にして、或は同方面に二ケ所ありしやに、思へども審ならず。


以上連記する如く、其設置既に充分なれば、其の整頓の上にも又、大なる差あるを感ぜしめたり、其入口には、其道場に関する、規定あり、而して数ケ條に過きざれども、実に能く行き渡れり、殊に時間の厳なるに至つては、驚かざるを得ず一旦停止の相図あると共に、数十組の稽古も、一同に中止し敢て乱ることなし、其礼儀は又甚だ重ぜらるるものにして、帽を頂き、及び袴を着せざる絶てこれを見ず、水にて身を清めたる後といへども、其入口に於ては必ず帯袴する事とせり、然も上下和気尽くるなく、平和の気は四方に溢れたるを見たり、
我部に於ては其設備不完なりといへども、又多少顧べしと信ず。道場の面目を保つ上に於て以上の要素は甚だ必要なるものなるべし。