岬一郎の抵抗

岬一郎の抵抗〈上〉  岬一郎の抵抗〈下〉



「岬一郎の抵抗」上 半村良 毎日新聞社 ISBN:4620103535 C0093

「岬一郎の抵抗」下 半村良 毎日新聞社 ISBN:4620103543 C0093


さすが目黒考二が推すだけのことはある。これは名作。
久方ぶりの半村良だが、やはりこういう大御所はさすがに文章がひと味もふた味もちがう。小松左京とか筒井康隆みたいに才気走った感じはしないけれど、着実にしかも飽きさせずに文章を落ち着いて読ませる。小難しい難解な言葉も使わずに、しかしそこに描かれる世界のなんと広い事。
ほとんど哲学的実験みたいな設定というか論理というか。「社会」というもののあり方人間のありかたをここまで深く掘り下げることのできる作家は少ない。生半可なSFには終わらない所は長い間書き続けてきた作家の修練のたまものなのだろうなあと感心する。この人の作品に関する限り、日本のSFも成熟したといえるのかもしれない。

映画「X men ゼロ」を観た。
スクリプトの中にそんなシーンあったっけと、予告編をみて考えたのだが、かなり書き直しているようだ。
まず、冒頭が違うし、女性の博士の出番がなくなった。ついでにケイラの設定も大幅に変更。性格設定に無理があったからだろう。で、エンデイングも場所から何から完璧に変更書き直し。おかげで物語の進行は分かりやすくなったのと、いらぬCGがなくなった。
イメージ的にはかなりのメロドラマ臭が、一気に「乞うご期待ハリウッド!」になった。それはそれでよし。おかげで、後日談になるXmenにつながったし。が、パトリック・スチュワートが満面に笑みをうかべる顔を見ていたら、福笑いにしか見えてしかたなし。しかし数十秒しか出ないって、なんか哀しい。
しゃべりずぎの仲間が次ぎ会ったときには、口縫われてたっていうのもギャグか。なかなか、楽しい映画でした。
ヒュー・ジャックマン、あの筋肉作るのにものすごいトレーニングをしたそうだ。納得。

ただ、本編上映の前に映されたのが「アバター」と「レスラー」の予告編だったので、ミュータントの異様さ?が異様に見えなかったのが可笑しかった。アバターかなり気色悪いキャラだし、レスラーのミッキー・ロークは本物の自前だし。って、昔のミッキー観て知っていたら今のミッキー、Xメンの作り物ミュータントよりはるかに怖い。