元気でいてよ、R2ーD2

元気でいてよ、R2-D2。  人生を盗む男


「元気でいてよ、R2-D2」 北村薫 集英社 ISBN:9784087713152 C0093

「人生を盗む男」  マイケル・パイ  徳間書店 ISBN:4198614830 C0097


なるほどエスプレッソマシーンってこんな形をしているのか。表紙でご覧下さい。読者に「うわあ」と言わせる短編をという前書きはまさしく。後味がよろしいかどうかは別問題にして、さすがに御見事な短編種でした。
ときおり背筋がすっと寒くなる、しかし、あるんだよなあこんなこと。いやだけどあんなこと。生きているうちにはこんな思いもするわけで、と。浮気の確信尻尾を攫むという、些細なことではあるけれど絶対的な確信に至る一瞬をあざやかに描き出す手腕は北村薫ならでは。存分におたのしみ下さいと差し出された旨し作品の束であります。

「人生を盗む男」
ミステリー仕立てかと思って撰んだら、どうも違ったようで。独白の多いどちらかというとガルシア・マルケスがかった(よく知らないけれども)語り口なのでした。それはそれでお好きな方もいらっしゃるかとはおもうけれども(桜庭さんはどうだろうか)自分は慣れていないので。原題がそのままのハリウッド映画になっているのですが、さてどういう風に映画は作ったのだろうか。素材としては一級品なのですがちょっと語りが重すぎるのもあってそのまま映画化したら文芸作品になったりして。
リプリー」(読んでいない。パトリシア・ハイスミス?)タッチでゆけば犯罪小説、ヒロイン強調すればサスペンスロマン、いずれにせよハリウッドだもんねえ。どうするんでしょ。どこかで映画の概要見てみるか。全然違う話になっている可能性大。
そこそこにおもしろく、つじつまも一応ちゃんと最後で合っている。テンポがとろい気がするが、それは瑣細なこと。