黒い山

死は万病を癒す薬(ハヤカワ・ミステリ1830) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)  黒い山 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1828)


「死は万病を癒す薬」ダルジール警視シリーズ レジナルド・ヒル 早川ポケットミステリ1830 「A CURE FOR ALL DISEASES」ISBN:9784150018306 C0297

「黒い山」レックス・スタウト  早川ポケットミステリ1828 ISBN:9784150018283 C0297


前作で死にかけたダルジール警視はまだ回復がおぼつかない。療養先の施設で殺人事件勃発!
ともすればひっくり返りそうな身体と記憶を引きずりながら、ようやく独立し始めたパスコーにちょっかい。この作家の原作を読んでも英文学ほかほかの教養がない上に駄洒落に似た言葉遊びにもついてゆけそうもなし。つくづく思い知らされますね。本家本元はジェイン・オーステイン未完の小説「サンデイトン」。その設定をもとに書き出したというから生半可でない。できればそちらも機会があれば読んでみたいものだ。登場人物の設定の見事さは、オーステインによるものかヒルのものかは知らねど、
ゆったりとした物語にのっかって楽しめる事請け合いの一冊。

「黒い山」
本当はヒルより先に読むべきだったと少々後悔。こっちはむちゃくちゃに展開が速くてついてゆけない程。ヒルの後では余計にだった。非常に稀な、ネロ・ウルフが部屋から出て来るどころか縦横無尽?に世界を飛び回るという異色の作品。ほとんどネロ・ウルフにはこだわりは無いのですが、ちょっとたまげた。チトー体制だの、ユーゴスラビアだの、おいどういう時代設定だよと突っ込むというより頭が混乱したのですが、本邦初公開ならぬ初翻訳とはいえ、原書が発表された年代が古い。
納得しごくではありますが、そういう意味では作品も時代の新旧に緊密にかかわってくるのねえと感心。
冷戦時代を描いたジョン・ル・カレみたいに古びないものもあるのですから、ここはやっぱり格の問題なのか。