緒形拳を追いかけて

ラウィーニア  緒形拳を追いかけて



「ラウィーニア」  アーシュラ・ル・グイン 河出書房新社 ISBN:9784309205281 C0097

緒形拳を追いかけて」 垣井道弘  ぴあ株式会社 ISBN:4835616200 C0074

叙事詩の中に生きる淑女の生涯。戦の無惨さとそれに翻弄される人々の生と死の世界が、絶妙な距離をおいて語られる。この作家の語る世界はそのまま「伝説」といった風味がある。いかにSFあるいはファンタジーという衣をまとうていても。ほんとうのところこういう作品を一気に読んでしまうのは外道というもので、言葉を辿り辿りゆっくりと吟味しながら読んでゆくべきしろもの。そういう意味では自分は似つかわしくない読者だということを毎回知らされる。
大元の叙事詩の方も一緒に読んでみたいところである。そういえば「ベオウルフ」はサトクリフだったっけ。アンデルセンの即興詩人そういえばずっと昔に読んだきり筋も忘れてしまった。森鴎外の訳で、安野光雅の愛読書でしたっけか。こういう物語を悠々と読み込めるような生活したいものだ、とありえない?望み。

緒形拳を追いかけて」
まだ御元気な頃に出版されたもの。自分の年代だと「木下藤吉郎」と「武蔵坊弁慶」はこのひとで決まり!「仕掛人」も随分楽しませていただいたよなあ。吉田直哉の活躍した時代が、そっくりそのまま自分のそれと重なるのだということがよく理解出来る。「俳優」あるいは「役者」というものはどんなことを考えながら生きているのだろうか、と興味があって読んでみた一冊。中井貴一の「日記」とか、当然の事なのだが「役を生きる」ということが自身の生き様に直結していることが納得出来ます。 「よく演じることは、よく生きる事」というふうに。厳しい世界ですね。