お岩さん

嗤う伊右衛門  女優 岡田茉莉子  ピーコとサワコ




嗤う伊右衛門」(わらう いえもん)  京極夏彦 中央公論社   ISBN:4120026892 C0093

「女優 岡田茉莉子」(じょゆう おかだまりこ)  岡田茉莉子 文芸春秋 ISBN:9784163709406 C0095

「ピーコとサワコ」  ピーコ 阿川佐和子 文芸春秋 ISBN:4163667709 C0095



読み終えてはじめて納得する。ああたしかに「山本周五郎賞だ」
非常に味のある話だった。これならお岩さんも納得するだろうという。京極夏彦が恋愛小説を描いたらこんな風になるのかとしみじみ思う。
なにしろ「純愛小説」である。というわけで山本周五郎にふさわしいという時代劇。
いままでの京極さんの作品とはどこか違っているような気がするが、きっとそこを含めて受賞したのだろうなあ。 とっても深い小説でありました。

「女優 岡田茉莉子
田中絹代乙羽信子、ほかほかこの頃の映画スターは時代背景が関係していて、
今の時代のように「とにかく有名になりたい」とかスカウトされたいとかいうよりも、「とにかく食べられるように」という方がその理由になってこの世界に入ったというひとが多いような気がする。 あるいは、養母がそれを望んで子どもをその道に進ませるとか。
勿論この岡田茉莉子という女優は知っていたけれど、さすがに佐田啓二としばしば共演したという年代でいらっしゃるのでそのアイドル時代は知らない。出演映画が数百本というのも映画全盛時代に活躍した女優ならでは。
その大まかな映画のあらすじが逐一語られていて面白い。またこの時代のスターの姿も興味深いところである。
三国連太郎の「台詞を覚えない。覚えられない」というエピソードには笑ってしまう。
こういうことが言えるのも親しいからだろうけれど。
底に流れているのは、必ずしも自分の意図ではない女優業という選択を貫き通したがゆえの「プロ意識」で、これは他の女優さんの略伝からはなかなか見取ることができない。
邦画をあまり観た事が無いので名前は聞いたことがあるが、吉田喜重という映画監督については知らなかった。この監督について知ることもできるという二倍美味しい自伝。

「ピーコとサワコ」
阿川佐和子さんをテレビでほとんど観た事が無いので、番組関係の話題はさっぱりわからず。
が、戸川昌子、中山アイ子ほかほか交流歴を読んでいるだけで十分面白い。ヘータロー(すまぬ。ヘースケか)さんはそんなにおしゃべりなのか、とか。
(ヘータローさんて誰?と言う人はこの本読んでみるべし。とても有名なお方です)
毒舌といいながらピーコさんにはアイがあるのねえとよくわかる。いままひとからげに「おすぎとピーコ」セットに考えていましたが、ちょっと区別ができるようになったかも。
抱腹絶倒の対談集でした、ってようも出版出来たものである。