天国に一番近い島

北緯14度 (100周年書き下ろし)  オドの魔法学校 (創元推理文庫)  古本綺譚 (平凡社ライブラリー)



「北緯14度」  絲山秋子  講談社 ISBN:9784062150903 C0095

「オドの魔法学校」 パトリシア・A・マキリップ 創元推理文庫 ISBN:9784488520076 C0197

「大増補 古本綺譚」(ふるほん きたん)  出久根達郎 平凡社 ISBN:9784582766899 C0395



絲山秋子に「天国に一番近い島」を描かせるとこうなる。(島じゃあないけど。アフリカのセネガルです)
「天国に一番近い島」を知らないって?原田知世のファンならばご存知でしょう。でも、森村桂はしらないか…といいつつ、原作は読んだが映画の方は見たことの無いワタクシめ、どんな映画に仕上がったかは知らない。いや、話にならんではないか。


とまあ冗談は顔だけにするとして、これは面白い。もう仏語と日本語の間で頭がウニャウニャになってしまった作家には形も外聞も取り繕う余裕なんて無いのだ。本音が出てる、という感じがひしひしと伝わってきます。いかに貧しくとも金がなくともいい加減であっても、やっぱり彼女に取っては「神様が居る」所なんだなあとそういう気がする。絲山さんお幸せですね。そんなあなたには群馬とセネガルという二つの故郷がある。



「オドの魔法学校」
え?マキャリップとばかり思い込んでいた。「マキリップ」ですか、この作家さん。
もう30年くらいこの作家さんを読んで来たような気がしますが、タニス・リーほどではないにしろあのころのに比べて「妖しさ」が薄れて来たような気が…勿論ちゃんとそれなりのレベルの達者な作品なのですが。
「妖女サイベルの呼び声」に比べれば大概のファンタジーなんて足下には及ばないのだから仕方ないか。でも流石にカーニバルの情景の魔法は素晴らしい描写。他の人には絶対描けない絢爛豪華な映像を堪能できます。シリーズものではないのでしょうか、この世界は。そうだと惜しいなあ。

「古本綺譚」
まったく狸なんだから、この作家。何食わぬ顔をしていつのまにか変な世界に読者を拉致してくれます。
古本屋かつ小説家というところがもう絶妙のコラボというか、まったくどこからどこまでが本当でどこからが創作なのか皆目わからない。わたくし的には内田百輭と良いとこ勝負。(と言ったらかえって喜ばれるかも)


きみがわるいんだか、おかしいんだか、しんみりするんだかどうしたらいいのかよくわからん話がいっぱいつまっています。
大増補とあるから、ひょっとしたら以前読んだことがあるかもしれない。芦原将軍の名前は聞いたことがある。多分「外骨という人がいた!」という本をのぞいたからでしょう。変に面白い芦原自伝でしたが、しかしこれ戯作にしても命がけの時代だよねえとしみじみ思う。