RailWays

地元出身の監督が地元を舞台にロケしたという映画をみてきました。
出演俳優陣の豪華なこと。中井貴一高島礼子奈良岡朋子橋爪功遠藤憲一佐野史郎宮崎美子、アリとキリギリスの?さん、中本賢?ほかほか、「ああこれが日本映画の系譜」という感じ。
とくに久しぶりにみた奈良岡朋子の演技がすごかった。一呼吸ずらしてふっと声を発するあのしゃべり方、本当に「こんなおばあちゃん居る!」という優しい出雲弁。Nativeは佐野史郎さん一人で、これがまた早口にぼそぼそと台詞を喋る姿はもう嬉しいのひとこと。出雲の歴史博物館の企画展を見ていたのでロケ地とかが推測出来て又面白く。


一度湖北線を車で走ってたら(ちょうど一畑電車の線路と併行して走っている部分がおおい)夜間にロケらしく民家の前に煌々とライトがいくつも点いていたのを見掛けたことがあります。「ああ、噂で聞いているあの映画のかな」と話しながら通り過ぎたのですが、多分俳優さんは参加していないころだった。


一畑電車や同じ経営だった「一畑パーク」に小さい頃にあこがれを持っていたうちの旦那さんには別の意味でも感慨のあるもので、そういえば歴史博物館の企画展で見掛けた同年代の男性が食い入るように展示を見ていたのを思い出しました。その隣の奥さんらしき人は別の土地の出身なのでしょうね、大して熱は入ってないところが笑えましたけれど。


そういう自分も別の生まれ育ちですが、そういう思いはどこに育っても似たものがあります。通学通勤はいまやレトロとしかいいようのない希少な電車(クモハ42形 小豆色の素敵な大好きな電車だった)でしたし、家の横を走っていたのは蒸気機関車でした。(さすがに客車は引っ張っていなかった)
一畑パークのかわりは、常盤公園で白鳥さんとともに写真に写り錦鯉に餌をやり、(これは嫌いだったけど)ジェットコースターに乗るとか菊人形を見るとか云々。家庭サービス皆無の父親唯一のイベントは「大和タワー」(デパートの大和=だいわ=の屋上の塔)に上がってレストランでランチ!屋上の10円乗りものにまたがってはいポーズ!



ということでレトロに浸らなくても、上質な映画でした。「いいひとしか出て来ない映画」というフレーズはあたっていますが、そんな映画があってもよい。だれだって幸せに生きて死にたいのだから。としみじみ思う50代。「ああ、お前はなにをしてきたのだと、吹き来る風がわたしに問ふ」と適当に中也の詩なんぞつぶやくわけで。