ヴァン・ショーをあなたに

陸軍士官学校の死 上 (創元推理文庫)  陸軍士官学校の死 下 (創元推理文庫)  ヴァン・ショーをあなたに (創元クライム・クラブ)  クリント・イーストウッド―ハリウッド最後の伝説




陸軍士官学校の死」上 ルイス・ベイヤード 創元推理文庫  ISBN:9784488296025 C0197

陸軍士官学校の死」下 ルイス・ベイヤード 創元推理文庫  ISBN:9784488296032 C0197

「ヴァン・ショーをあなたに」  近藤史恵 東京創元社 ISBN:9784488025298 C0093

クリント・イーストウッド」ハリウッド最後の伝説  マーク・エリオット 早川書房 ISBN:9784152091031 C0074



なんと若き日のエドガー・アラン・ポーが活躍するという異色のミステリー。語り手は引退した昔は凄腕だった警察官。今はど田舎のパブで飲んだくれる毎日だが。その近くの陸軍士官学校で生徒の遺体が見つかる。慌てふためく周囲の隙を狙ってなぜかこの遺体が盗まれ、
見つかった時には心臓がえぐり取られていたことで二重に大騒ぎになる。学校の校長はこの醜聞と失態によって閉校ということにもなりかねないことを恐れ、この引退した警察官に捜査を依頼するのだが…

叙情ゆたかな風景描写と、妙に緊張をもたらす家族関係の会話などなど、要素としては盛りだくさん、の上にポーの詩が重なってくるとなれば混乱しそうなものなのに、かっきり描いて顛末動機腑に落ち最後の怪奇趣味すれすれのオチなど納まっているところは申し分無し。いったいどうすればこんなもの書けるのか著者の頭の中を見てみたい。(多分分からないだろうけど)

「ヴァン・ショーをあなたに」
「タルト・タタンの夢」の続編。洒落ていますね。相変わらず料理の関係はわからないのですが。後半の3つはちょっと趣向がちがったものになっています。このシリーズずっとつづくのかな。楽しみです。


クリント・イーストウッド
この著者は、自由にかけるようにあえて本人にインタビューはしないのだそうで。たしかに、婚外子複数いるイーストウッド相手にそんな話をしてもらえるわけはないからそちらが正解か。読めば読む程解らないというか、人生そんなものともいえますが。出演作や監督作品の解説にも当然なっているのでそりゃあもう面白かった。なにしろ同時代に生きているわけなので、彼の映画がそのままこちらの人生、時代と併行連動している。秀逸な時代分析でもあるわけです。


印象的だったのは「ミステイック・リバー」の撮影のはなし。ショーン・ペンが、娘の遺体がみつかったと知ったために錯乱して6人の捜査員に取り押さえられるというシナリオに、下手をすると相手に怪我させそうだけどと言ったらイーストウッドが「解った」とひとこと。本番になったらわらわらと「16人」が被いかぶさって身動きとれなくなったという話。たしかにあの場面、なんでそんなに人間が来る!というくらいに群がっていた。水平視線から突然カメラがグンと吊り上がり、ショーンが天を見上げながら吠えるのを見下ろす。記憶違いかもしれないが凄い場面だった。
というわけで、なんなんでしょうね。このクリント・イーストウッドという人は。