自白

にんげん住所録  刑事・土門功太朗 自白



「にんげん住所録」  高峰秀子 文芸春秋 ISBN:4163573305 C0095
「自白」刑事・土門功太朗  乃南アサ 文芸春秋 ISBN:9784163289908 C0093


名文家として知られるだけあって凄いわこのひと。
ステージママとなった養母のためにほとんど学校にも通えず独学でここまで素敵な文章が書ける。
いくら高等教育受けても「才能」がなければ無駄なのよね、などと言われているようで忸怩たるものあり。なにより感性の鋭さと頭の回転の良さが並々ならぬ人なのだろうから、今更比較しても仕方の無いことか。ここまで鋭い方なら「あざとさ」みたいなものが出て来ても当然なのだがそういうものが現れないところが並の名文家?とは違う。
文を読んだだけで一度お話を伺いたくなる「人格」というのも、滅多に無い。講演とかいう鯱張ったものでなくて普段のお話を聞いているだけできっと嬉しくなりそうな、という感じがするのだった。ただ、この本の中に出て来た人物の多くが故人になられてしまっている。寂しいことだろうと想像する。


「自白」
50代前後の読者にとっては堪えられない「アノコロ」の時代を背景にした刑事物。
言ってみればこの土門は、そのひと達の父親世代にあたるのかな。世相と時代をよく表した事件や風物を語ることで真実味を出している、というよりそちらの方がともすると主なのかもしれないとさえ思える。
どういう意図でこのような物語を書こうとしているのか、著者のかんがえるところが気になった。勿論定評のある作家さんですので、物語はかっちり書いてあるし読ませてくれます。さてどういう方向へ向かうのか、この作家も見逃せない。


Roadside Crosses
半分を少し過ぎたところ。あいかわらず物騒なことで、被疑者少年が自転車で人を襲いまくっているというところが恐ろしい。
ゲーム世界でサバイバル技術の知識を全部学んだ、なんていう話も出て来て、なにがリアルなのか仮想現実なのか境目がなくなってきている。ダンスにたいする説明のなかに「Ghost in the shell」(攻殻機動隊)とか「Hikikomori」(ひきこもり)とか、そういう話だの日本語がそのまま英語になっていたりして、おお!と感動する。
そういえばパソコン黎明期にプログラマーの情緒障害が問題になっていたらしいことが書いてあったが、ある意味それが低年齢化したという言い方もできるのかも、などと考える。しかしどうなるんだろうね、この先。って人ごとではないか。「Web」を「活字」に置き換えればそのまま自分のことだし。