宮部みゆきのえらぶ松本清張

松本清張傑作選 戦い続けた男の素顔―宮部みゆきオリジナルセレクション



松本清張傑作選 宮部みゆきオリジナルセレクション」戦い続けた男の素顔 松本清張 新潮社 ISBN:9784103204367 c0093



もう十何年ぶりかの松本清張宮部みゆきが何を選んだか、ということで興味津々。
後書きの方を先に読まずにいて良かったと思える本。でなけりゃあ、最後まで読む気になったかどうか知れず。さて「宮部みゆきの意図」を探りながら読むというのが一番正しい読み方でありましょう。なにしろ1000編も作品を書き続けた文豪(まさにそう言えると思う)なのですから、そのあまたある作品からチョイスすると言うことがすなわち編者をもあらわしているわけで。



やはり松本清張らしい作品。当たり前なんだが、読んでいて辛い部分がありまして。読みにくいと言うのではなく、その登場人物の運命が辛い。親父の本棚から取り出して読んでいたのが思春期の真っ盛り。
それでなくとも辛い憂鬱な季節に、かのような境遇の人々(まさに現実等身大の)の物語を読むのは辛いわなあ。ということで松本清張は読破しておらんのだが、今回その機会を得て良かった。


おもいがけなく出雲地方あるいは中国地方を舞台にしたお話が多く、この作家の歴史的知識の正確さなんていうのもあらためて確認し。やはりこの方ここまで取材にいらっしゃたのだろう。そういえば、砂の器もこのあたりが舞台のひとつだった。推理小説家としての松本清張とはちょっと違った面を見せていただいた、有益な経験でした。


ところで、表題がいったいどれが一番に出るべきか、というのに非常に迷いますなあ。「宮部みゆきオリジナルセレクション」では既に長過ぎるのにこれでは意味が分からんし。「松本清張傑作選」はシリーズ名だし、だからといって「戦い続けた男の素顔」は副題でしかなく。
どうせえちゅうんじゃ!としばし考える。