チャップリンの影

ガサコ伝説―「百恵の時代」の仕掛人  チャップリンの影 ~日本人秘書 高野虎市~  ヘンリー・ミラーのラブレター―ホキ・徳田への愛と憎しみの記録   河合隼雄 心理療法家の誕生


ガサコ伝説「百恵の時代」の仕掛人  長田美穂 新潮社 ISBN:9784103267317 C0095

チャップリンの影」日本人秘書高野虎市  大野裕之 講談社 ISBN:9784063397598 C0023

ヘンリー・ミラーのラブレター」ホキ・徳田への愛と憎しみの記録  江森陽弘 講談社 ISBN:4062001802 C0095

河合隼雄 心理療法家の誕生」 大塚信一 トランスビュー ISBN:9784901510752 C1011

あらら、気がついたら十日も過ぎていた。なんともう一月も終わり。困ったもんだ、年明けからずっと雪模様が続いている。
「ガサコ伝説」を読み終えてからどうもずっとしっくりゆかない、納まらない。新興宗教の教祖の家という虚飾の家に生まれそだち、虚飾の芸能界を取材する編集者として君臨し、結局25年の永きにわたってつきあいのあった男性は名家そだちのお坊ちゃん。
なんだかずっと「かたち」に拘る世界で生き続けたヒトの話だからかどうか知らぬが、「箱」はうまく作ってあるのに「たましい」が入っているのかいないのかよく解らない状態で話が納まってしまったような気がしてならず。
「この女性がすごかった」というよりも、「ここまで這い上がって搾取されながら生きねばならなかったのか、この時代の女性は」という感じの方がひしひしと身に迫って来る。気のせいでしょうか?
田中澄江か、現代なら林真理子に書かせてみたい。きっとこの「怨念」を彼女なら理解するだろう。著者は自分より10才くらい下か。
世代がちがうからか、いい環境で育ったか、経験がなければ想いは及ばないだろうなあと思った次第。

チャップリンの影」
来日が5・15事件の時だったとは知らず気付かず。近代の移民の歴史を知るためには非常に役立つ本。
先日に「石原慎太郎」関係の本と並べてみると、もっと面白いはず。
面白いのは、極貧の母子家庭育ちのチャップリンが、広島の富裕な名家育ちの高野を運転手として雇い入れるという皮肉。
著者がチャップリンの研究家というだけあって、解り易く面白く読み易く語っている。素顔のチャップリンを知りたいひとにもお勧め。 学生の頃半分徹夜で「チャップリン自伝」を読みふけったのを思い出した。
けど、これは普通の厚さなのでそこまで疲れません(笑)お勧めです。

ヘンリー・ミラーのラブレター」
文豪ともなるとここまで自負の念が強いわけ?このヒトだけだろうと言う気はするが。
気の毒みたいだけど笑える。75才のおじいさんが26才の女の子に惚れ込んでラブレターを書きまくる。しまいには彼女は面倒になって封も切らない。本を読まない女の子にとってはじいさんはじいさんでしかないのに、文豪を神様のように慕っている取り巻きに「結婚してやれ」とせっつかれる。たまたまビザ切れで国外退去させられそうなので結婚を承知する女の子は、お友達といっしょに同居でベッドインはなしねと条件をつける。で、三年間の結婚生活。
あけすけな語りを読んでいると笑うしかない。
しかし「ぼくの手紙を持っているとそのうちお金になるよ」云々、やたらと猥談の好きらしかったこのヘンリー・ミラーやっぱり自分の趣味ではなかったなあと、「南回帰線」を数ページで挫折した20年前を思い出す。
今なら読めるだろうか?いや、よしてくれ…。

河合隼雄
高校時代、古代文明と心理学に凝って岩波新書中公新書を読みまくり。「コンプレックス」は覚えがあるがその頃の刊行だったのかと知る。河合隼雄宮城音弥は何冊も読んだなあ。
ユング派とか箱庭療法とかこの方が日本に紹介したのだと今回知りました。結構最先端?の本を読んでいたのね、その意味ではとてもいい時代に学生時代を過ごせたかもしれないと今になって知る。
いちど講演を聞いたことがなかったっけ?とても明解で面白い語りで感心した記憶がある。

というわけで、なぜかノンフィクションの伝記ものでかたまってしまった今回。
宮部みゆきの「小暮写真館」買おうかなあ、と迷っている。
荻原浩の「砂の王国」もいいのだが。