マリリン・モンローの最後を知る男

砂の王国(上)  砂の王国(下)  マリリン・モンローの最期を知る男



「砂の王国」上 荻原浩  講談社 ISBN:9784062166447 C0093

「砂の王国」下 荻原浩  講談社 ISBN:9784062166454 C0093

マリリン・モンローの最後を知る男」 ミシェル・シュネデール 河出書房新社 ISBN:9784309205069 C0097

お客様は神様です、と宗教団体も言いたいのではと言う気になる。篠田節子の「仮想儀礼」と並べて読むべし。作家の着想と展開の微妙なずれをとくと味わうことができる。ちょっとした「文学論」にもなりうるこの作品たち。ただ読むだけでも当世屈指のエンターテイナーの作品故十分に楽しめるけれども、セットで読めばその何倍も楽しめること請け合いのものでした。問題はどちらを先に読むか、ということだろうけど。これは、普段どちらの作家をより好んでいるかというところの選択でしょうか。自分の場合は篠田節子の方でしょうか。(今回そちらの方が先に出版でしたので時勢にのりました)

マリリン・モンローの関しては映画関係で多少読んでいるけれど。今回のような精神分析医との関わりからというのは初めて。面白いです。何がって、この頃はフロイト精神分析手法で猫も杓子もカウセリングをしていた。まだ、ユングとか出て来ていない頃。米国の暮らしには弁護士と精神分析医がつきものとは聞いておりますが、このころ一気に普及したらしい。それこそ猫も杓子もとっかえひっかえカウセリングを受けている。映画界のスター、監督、すべてお世話になって報酬も莫大、人間関係のつながりで売れっ子精神分析医はセレブのお仲間入り。などという話は初めて読みまして。「フロイト精神分析」はいかにして西欧世界の上流階級に敷衍して盛況となり「文化」として定着したか、などというちょっと学問風な言い方をしたくなるわけでした。この本はフィクションでもありノンフィクションでもあるという不思議な立場にあるものですが(その理由は後書きにある)、

そういう意味でちょっと眼から鱗という感じで拾い読み。だって、カットバック多すぎて完璧に混乱するんだもん。ロミー・シュナイダーといい、俳優という職業は余程精神が安定していないと自重で潰れてしまうのかも。

遠方より友来る。亦愉しからずや。もう十年以上逢っていなかった。