言壷

ピスタチオ  チューブな形而上学  言壺(ことつぼ)  影なき紳士  私の家では何も起こらない (幽BOOKS)  愛おしい骨 (創元推理文庫)  わたしが明日殺されたら


「ピスタチオ」 梨木香歩 筑摩書房 ISBN:9784480804280 C0093

「破壊者」  ミネット・ウオルターズ  創元推理文庫 

「チューブな形而上学」 アメリー・ノートン 作品社 ISBN:9784861823374 C0097

「言壷」(ことつぼ) 神林長平 中央公論社 ISBN:412002380x C0093

「影なき紳士」 マーテイン・ブース 文芸春秋 ISBN:4163157204 C0097

「私の家では何も起こらない」  恩田陸 メデイアファクトリー ISBN:9784840131650 C0093

「愛しい骨」 キャロル・オコンネル 創元推理文庫 ISBN:9784488195120 C0197

「わたしが明日殺されたら」  フォージア・クーフィ  徳間書店 ISBN:9784198631802 C0036


物語が神話へと変容してゆく。そんな感じの梨木香歩の世界。どんどん変な世界に漂ってゆく感じである。そのうち心地いいのか悪いのか判らなくなるのではないか、なんて考えてもいるのだけれども。雰囲気がやはり「グリーン・ノウ」の世界に似ているような気がする。あんなふうに神話になって行くのだろうか。時折ヨムヨムに家守綺譚のつづきを書いていられるようである。早く一冊の本にまとまらないかしらと心待ちにしている。


「破壊者」
読んでしまって後ろにある解説でこの作家そんなに作品があるわけではないらしいことを知る。勿体なかった。どうせならペーパーバック買ってゆっくり読むべきだったと少し後悔。つぎは読了済みの作品が邦訳されるのを待つしかなし。それにしても不穏な作品である。ミネット・ウオルターズらしい重くて居心地の悪い作品、といいつつ相変わらず面白し。


「チューブな形而上学
正月用に借りて来た一冊。が、正月は活字が進まない影響で半分のみ。えらく面白い語り。表紙の女の子の写眞はご本人?
本当に陶磁器で作ったフランス人形そっくり…生物とは信じられないくらいに。で、題名「チューブ」ではなくて「シュールな半生」とでも変えた方がいいんじゃないかというくらいに独創的。新作出たら必ずベストセラーらしいですこの作家さん。眼から鼻にぬけるよな頭の冴えぐあい、とみた。ゆっくり腰を落ち着けた時に読みたし。


「言壷」
賞をもらったとかいう作品。参りましたッ!といいつつ上記の事情で完読ならず。否最後まで読まなくても確信出来ます。最高です。で、怖い。非常に怖い。ブラッドベリの「華氏○○度」なみに怖い。でもSF読むからにはこんな世界をしらねば損というか、SF好きとは言わせない。


「影なき紳士」
どこが「影なき」じゃ、どっぷり漬かってお日様の当たるとこにでられないような英国紳士ではないか。映画はかなりの翻案です。 ハリウッド映画なんだからそこは仕方ないとして。別作品として読むとよろしいかと。さすが「英国」の「独白」記述、品があって久し振りに「チップス先生さようなら」の雰囲気を思い出す。地味ですが良い作品だった。


「私の家では何も起こらない」
そう確言するこの家の持ち主である女流作家が一番怖いかも。恩田陸さん最近ホラー小説づいているのだろうか。近作の「夢違」も怖そうだし。数多くのホラー小説を読み込んだ作家が書くとこんなにおそろしい短編集が出来上がる。でも、なんだか行ってみたいようなそんな丘の家。やれこわ。


「愛しい骨」
とうとう邦訳を手に取ってしまいました。で、謎解きの一部間違えて読んでおりました。いいけどさ。ネタバレになっちゃうのでうかつなことは言えませんが、たしかにいろいろな「愛情」がこの作品には詰まっているのですよね。それは確か。余りに切なすぎる愛が、涙を誘う。


「わたしが明日殺されたら」
一転してノンフィクション。アフガニスタンで生まれ、多分女性としては初めて議員になっている女性の半生。
女性の活躍を認めない団体、世論という逆風に真っ向から闘いを挑んでいるため暗殺される可能性がある。いつ殺されるか判らないから二人の娘のために残す手紙の形式で本を書いている。イスラム世界の女性たちがどのような暮らしをしているのか(していたのか)を知る為には非常に役に立つ。たしかにこの人は「政治家」であるのだという感じがした。そう、政治家はこういうふうな思考論理をするのかと。日本の政治家たちに読ませてやりたい、と思いますこの真摯さ。何時命を取られるかもしれないという日常の中ではこんな風に、眼がまっすぐに前方を見ざるをえないのかもしれず。