天地明察

期待を超えた人生―全盲の科学者が綴る教育・就職・家庭生活  死体が語る歴史  コンタクト・ゾーン  天地明察



「期待を超えた人生」 全盲の科学者が綴る教育・就職・家庭生活 ローレンス・スキャッデン 慶応義塾大学出版会 ISBN:9784766418736 C0036

「死体が語る歴史」古病理学が明かす世界 フィリップ・シャルリエ 河出書房新社 ISBN:9784309224916 C0022

「コンタクト・ゾーン」 篠田節子 毎日新聞社 ISBN:4620106690 C0093

天地明察」 冲方丁(うぶかたとう) 角川書店 ISBN:9784048740135 C0093



「期待を超えた人生」
以前盲目で博物學者という人の話を読んだことがあるが、今回はもっと高齢で公の機関でも活躍した人の自伝。
米国の障がい者教育に関しての公共機関の役職についている。以前も思ったのだが、こういう障害者に対する教育が米国でしっかり普及しているらしいところに感心する。といいつつ、日本へのこういう分野について知っていないからそう思えるのかもしれないが。


「死体が語る歴史」
研究書というにはくだけていて、且つ断片的。延々と読んでいるとグロい描写に少々気分が悪くなるけれども、面白い。
火葬に慣れた?身にあっては、ここまで「生前と同じく見えるように」を目指す遺体保存処理の数々は、エジプトのミイラ作りに負けず劣らず複雑怪奇なり。しまいには遺体の全体、部分を「コレクション」して喜んでいる「高貴な人々」などの悪趣味さなんかもすごい。
「顔を保存する」ために頭蓋骨の前面を削ぎ顔の皮を剥がしたり、一体何を目指しているんだかと言う気がしなくもなし。
ちなみにこの本当の主旨は、それら遺体の科学的分析によって当時の人々の生活が判る、という話なのである。
当然ながら「保存状態がよい」ものでないと分析も難しいので、かように「大切に保存された」ものでないと残っていないということで、「処理」を語る過程があるわけで。
ジャンヌ・ダルクの火刑の詳細やら、その「遺骨」の真否鑑定やら、氷河のなかから現れた名高い「エッツイ」、王の愛人の死亡原因などいろいろあるのですが。グロいのがお好きでない方にはあまりお勧め出来ない科学の本。(寄生虫もです)


「コンタクト・ゾーン」
たまの篠田節子。またまた一気に読んでしまった。南方インドネシア系のリゾートで潤う国での政治争乱。
一癖ある女性三人がそっちの方が人が閑散としていいわとなめてかかってこの争乱から逃遅れ、船での逃避行がはじまる。流れ着いたのは…?
地元住民に匿われるが政府軍、ゲリラ、新政府正規軍が入れ替わり立ち代わり現れる。突如派閥分裂をおこし互いに殺し合うこれらの武装部隊相手にあの手この手で折衝生き残りを図る住民たちの中で明日をも知れぬ暮らしの3人。
さて、彼女等は無事に日本へ帰れるのか、という話なのだが。
すごいです。いろいろと考えさせられます。難民とはどういうものか、とか。



天地明察
冲方丁初見参。うまい。でもって、面白い。さすが受賞作。ほかに言うことなし、か。まず読め。