蚊トンボ白鬚

蚊トンボ白鬚の冒険  全国一周岬巡り―鉄道とバスの旅  身体のいいなり  廃院のミカエル  転迷―隠蔽捜査〈4〉  ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え




「ロスト・シテイZ」探検史上、最大の謎を追え デイヴィッド・グラン ISBN:9784140814253 C0098

「転迷 隠蔽捜査4」  今野敏  新潮社 ISBN:9784103002550 C0093

「廃院のミカエル」 篠田節子 集英社 ISBN:9784087713787 C0093

「身体のいいなり」 内澤旬子 朝日新聞出版 ISBN:9784022508195 C0095

 「全国一周岬巡り」 樋口実  文芸社  ISBN:4286012344 C0026

「蚊トンボ白鬚(しらひげ)の冒険」  藤原伊織 講談社 ISBN:4062111985 C0093



全然探検向きでないインドア派の記者がたまたまアマゾン密林のなかに消えた英国人冒険家にはまってしまって、という話ですが別に冒険ジャンル好きでなくとも読んでみる価値がある。というのは、大英帝国時代どうして多数の「冒険家」が発生したかという時代の要請としての歴史的背景が丁寧に描かれているある意味珍しい本ゆえに。
個人の人生を描くおまけにという以上に詳しいので、自称冒険家たちが多数「養成」されどういう考えで彼等が世界中の「未開な地」に散らばって行ったかという事情が非常に興味深くよめるのです。おすすめ。しかし「英国紳士という種族」が発生するには、こういうことに便利だったからという考え方もできてちょっと目からウロコ。いやなに歴史的にはちょっと前の時代なのです。なにしろ第一次大戦に主人公の冒険家は参戦している。年代的にはアガサ・クリステイより 少し年上というところでしょうから。

「転迷」
隠蔽捜査シリーズも4冊目になりましたが、このシリーズやっぱり面白いです。まだまだかいてもらえるかなあ。楽しみ。

「廃院のミカエル」
今回はイタリアが舞台。篠田節子上手いなあ。全然外国を描いても違和感が無いところなど。しかもじわじわと恐怖感が湧いて来るホラーだし。病み付きになっています。リアルとホラーの混ざり具合が絶妙でありまして、完成度高い。すぐに読み尽くすには勿体なすぎるので、続けては読みませんが結構多作でもいらっしゃるので嬉しい。


「身体のいいなり」
先日の「飼い喰い」の著者が書いた身体の本。ものごごろついた頃からすでにずっと具合のいい時が無かったという著者が、
乳がんを見つけて両方切除、手術後の手当であれこれやるうちに何故か以前よりまともな感覚の身体になった、といういきさつを書いています。
というか、結局これはそれまで身体の訴えを完全無視して意思で押さえ込んでいたゆえに反乱が起きたのだというような考えに至り。
で、いまはとりあえず「身体のいいなり」で生活している、ということなのですが。どんだけそれまで身体に酷い事をしていたのか、とそっちのことが知りたくなってしまった。酷い話なのですけれど、もう語り口が面白く(ゴメンナサイ)。内容的には飼い喰いのために豚さんを飼っていた時期にあたります。


「全国一周岬めぐり
鉄ちゃんでもない、とくに歴史に興味があるわけでもない70をすぎた爺さんが思い立って日本全国岬を基本電車とバスで歩いたという本。
この年代のひとが一番日本でいい目の人生過ごしているのではないかと、読みながらちょっと思う。
といっても、昭和10年生まれで電電公社定年まで勤めていい役職まで出世して天下りして あとは悠々自適ゴルフ三昧というひとがそうそう居るわけではないでしょうが。本人の経歴がなぜ関係ある、と言われるかもしれないけれども微妙に関係しているので。
というのは、全国有名どころの観光地スルーしてマイナーなところばかり目指しておられるのですがその理由悉く「あそこはもう会社の関係で行った」 「団体旅行で行った」云々いやどれだけこの人会社関係で観光旅行してるのよ、ということで。うちのご近所もしっかり今回ルートに入っておりますけれども、ということは相当マイナーな観光地というお墨付きを頂いたようなもので複雑なものが。
なれば電車とバスでの観光案内になるのではないか、という指摘もありそうですが。ものすごい強行軍で移動しておられるので、末端は結構な頻度でタクシーつかっている。ゆえにそっちもあまり参考にならないかも。結局運賃宿泊ほかで100万円くらい使ったというご報告でしたが、何の為にまわったのだか肝心のところなにをしたかったのかと。で、思ったんだがやはりこれ「青春18切符」をお使いで?

「蚊トンボ白鬚の冒険」
ある意味「テロリストのパラソル」から逃れられないという団塊世代の作家さん。それはそれで特化しているともいえるけど、20才の男の子がハードボイルド系の性格というのは自然とは言えませんが、驚天動地の設定でなんとかかんとかこなしている。おたがいツッコミあってる主人公ふたり?の喋りが面白い。脇役も面白いしそれはそれで楽しく読めました。
とはいえあまり後味のよろしくない幕切れ。エンターテイメントなのだから考慮して欲しかった。
故人となった現代作家はあまいり読まない傾向にあり。面白かったら面白かったでこれから新作もう読めないのかと悲しくなるので。でもシリウスの道?は目黒考二推奨だけあって面白かったよなあ。(といいつつ中身忘れている)
蚊トンボ設定は、多分20才の男の子のしゃべりを到底書けない作家さんの苦肉の策なんだろうなあ、と。そんなのがバンバン書ける器用な作家さんはもっと売れてるかも(失礼)と、自分に出来ない事を要求する自分勝手な読者の自分。