佐伯祐三

ただいま県立美術館にて佐伯祐三展開催中。油絵描きには問答無用の天才、夭折の知らなかったらモグリの画家なのだが。「お勧めです!」と知り合いの方に申し上げたところ「どういう作家さんですか?」と真正面から尋ねられ、ひねくれた性格からひねくれた言い方をしてしまった。「パリの雨に打たれて肺炎になってなくなった(ドジな)画家です」
実際その生涯について知ってから、そういう言い方をしたのを非常に後悔している。肺炎ではなく結核にかかっていたのですね。格式のある大きなお寺の二男に生まれ、青春のすべてを絵画に託し名門の学校へゆき名だたる画家の教授たちのもとに修行。自由恋愛により裕福な名家のお嬢様と結婚パリを目指す。夢のような前途があるはずだったのにケチがつきはじめる。
出立直前関東大震災により用意した荷物は全焼。夫婦でパリに滞在活動し帰朝して若手新進画家として気を吐くもパリへの思いやまず再度渡仏。
そこのどこが悲劇なんだと言えなくもないが、反面ここまで順調に画家としての夢を実現しておきながら、結核に罹患。死を覚悟してのパリに戻ったところで、6才の長女も結核と知る。奔放性なんとかというから結核菌を父親から貰った疑いもあるだろう。自責の念いかばかりか。
体力もなくなったところで雨に打たれ発熱、精神的に追いつめられ自殺未遂、精神病院にて療養中そのまま死亡。長女はその数ヶ月のちに死亡している。で、享年30才。会場に石膏型どりした本人のマスクがありました。デスマスクかとおおもってしまいましたが「ライフマスク」だそうです。友達と戯れにつくったそうな。デスマスクもつくろうと友人がしたそうですが、消耗して肉が削げ落ちた顔ではとれなかったそうで。
作品は蒐集家が集めた作品群を大阪市に寄贈したものだそうで、数もすごいが作品のレベルが鳥肌たつくらいのレベル揃い。30年の生涯でこれだけの名作を数なすというのが信じられないくらい。必見の企画展です。昔あこがれていたけれど、この眼で現物を見ることができるとは思いもしなかった。新大阪美術館構想が実現したら多分ちゃんとみることができるようになるかもしれませんが、さて。橋下知事がいちどバッサリその予算を切り捨てたとなったいきさつもあり。