第六日目の2

パンパかパーン!今週のハイライト!(古いギャグだな)
待ちに待った「呉」である。「軍艦フェチ」の同級生がいるらしい。田宮模型を見る事ができるくらいにこの青年は長生きできただろうか。見たら卒倒したかもしれない。


昼飯を食べて昼寝をしているうちに、尾道、竹原の沖合をゆく。音頭の瀬戸も難なく過ぎていよいよ午後2時呉軍港にはいった。十数艦の軍艦が見えて来たときにはいい加減船旅には飽きていたところもあり、鳥肌もので「絶叫」「長簫」の大騒ぎになった。


日清戦争の主役となった軍艦をひとつひとつ指差し名前を唱える友は、あこがれの実物に逢えて喜色満面である。上陸して海軍鎮守府、造船工場を見学その騒音のなか規模の大きさに唖然とする。6時に宿舎に入る。窓から軍艦も見え、夜中警戒の閃光灯が窓に映って照り返しで友の顔は青白く見えた。

船中に塩辛き午飯を喫し終りて余が第二の夢を貪りし内に船は、尾の道、忠海、をもすぎて、さむれば今竹原 といふの沖合をゆきつつあり。幕末の文豪として、史家としてその名を日本外史等に止めたる頼山陽は實にこの地に呱々の声を上げしといふ。


やがて、昔平家清盛権力に誇りて花に舞ひ蝶と狂ひ一世の栄華を恣にするや、正に厳島に詣てんと欲し、俄に切り開きしとうふかの、音頭が瀬戸もわけなく超ゆれば、我等が双眸は旭旗翻る十 有五艘の帝国軍艦を認めぬ。即ち是汽船が呉軍港に入らんとするなりき。時に午後二時。


山を高くして瞼に、水を深くして而も広く、湾内檣頭空をつき煤煙天に漲る之を是れ帝国の要塞呉軍港となす。今や我等はこの一大軍港に来たりて、目に十有余艦が英気を養ひつつあるを見ては、豪宕の気そぞろに胸襟を厭 し来て、覚えず快哉を絶叫して腕を撫すると共に、水漫に向って長嘯すること多時。



思ひ出す征清の役汝硝煙砲霰の中を駆○して、屑く朝日に匂ふ敷島の国威を輝がしたるを、彼は八島、彼は高砂、吉野は彼にして浪花はこれなど指示する友は、頗る通ぜるが如く得意の色見えたり。


やがで濛塵をけたてて 走る馬車をさけつつ、まづ海軍鎮守府に至り、次で一水兵に導かれて造船工場、機械工場、製缶工場などをみる、建築の高大は云はずも、その大々的機関が運転するや、五尺の鉄板も紙片を切るが如く十噸の鉄鍵も一塊の土よりも軽く匍然又轟然として天為に鳴り地為に響くに至りては衆皆唖然たり、


去て水雷団、海兵団に喨々腕鳴るの海國男児に接して6時宿舎に入る、家も後に水を控へたるを以て欄によれば、碇泊中の軍艦悉く指呼せらる、時に
砲声一艦に起れば叺声斎しく他の数艦に聞ゆ、また快なる哉。夜に入りて八島は探海電燈を点ずれば、閃光我が舎窓に入りて顔色青く照り渡りぬ。