熊本通信の2

前の年に工学部が開設され、校舎も建築中、教師など環境が整備されつつありというところ。
やはり何百人もの学生を受け入れるためには寄宿舎は必要不可欠のようである。
そういえば漱石の「猫」に寒月君が「鼻子」母子にめをつけられたのは下宿であったかしら。素行調査と寒月君の将来性を値踏みするために「くしゃみ先生」宅を訪れるところがあった。生徒が下宿屋の娘といい仲になって、と云う設定は結構小説にもでてきていた。そんなのが頻発したら、学校の方も困ったんだろうなあ。
学問的に言ってこの教科書(参考書)はどういうレベルなんだろうか、と知りたい気がする。

以上の如く生徒の出身地は、多く九州なる故に、其風俗言語等も亦中国地方と異なる所多し、古来本校の美風 として世に称賛せらるるは、質朴にして礼儀を重んずるの風なり、昨年より大学予科の外に、工学部設置せられ、 校舎は建築工事中、来学年の初め迄には落成する見込なり(現今は校内の仮校舎にて授業す)教員も漸次増加すべき筈なり、

現今は教授26名、助教授4名、嘱託講師17名、雇外国教師2、(瑞西国人1名独逸人1名)其内文学士5名、理学士7名、工学士2名、法学士2名尚ほ来学年には、工学部の教員来るべければ、大学予科志願者にしても、二部の志望の諸君は最も都合宜敷かるべし、

寄宿舎は主として一年生を入るる方針なれども、志望の者は二年生三年生にても自由に入ることを得、今学年の初めには三百名許有りたり、食事は自炊制度にして、生徒の内より委員長1名外2名(購入長保管長)を選挙して之に任ず、(詳細は他日に譲る)寄宿舎は南北二寮に分かれ、自修室二十余室あり、一室十六名を定員とす、各室に室長、副室長ありて各室を整理す、


序に二部教科書及受授教員を報道せん、
二部一年
英訳   Chester Field’s Letter       (教授 山川文学士)
     Macaulays History of England   (教授 枝光法学士)
国語  徒然草             (園教授)
漢文  八大家文集、孟子        (須藤教授)
独逸  ブッフハイム          (第一)(岩田講師)
代数  スミス大代数          (教授 杉山理学士)
三角  トドハンター大三角       (教授 川北理学士)
解析幾何  パフクル、コニックセクション (教授 川北理学士)(但し三角を終り第三学期より始む)
鉱物  敬業社編普通鉱物学教科書    (篠本教授)
地質  神保理学博士編日本地質学    (同)(但し鉱物を終りて始む)
図画  口授              (教授大平工学士)