仁多地方行軍の8

漢文特有の大袈裟な表現も本気かどうか判断し難い。
「双の眼に鮮血迸る」とは、修辞か否か。血圧大丈夫ですか?眼が充血してます?
などと冗談言ったらブン殴られる世界であることは確か。

ともかく戦闘は終り休戦の喇叭が吹かれ、負けました。
七時半から9時の間の演習。小学校にて村有志の供応をうけ9時半、道を日の谷にとり仁多郡の険しい山中へと足を踏み入れる。

偶々敵将太田中隊長は我右側面に彼の本隊を具し、剣を揮って一きは高く、つけ剣!吶喊!汪○の如く寄せ来るその声の、如何に激しく敗軍の我将士卒の耳朶に徹しけるよ。

ここぞ今暫時急ぎ撃ちかかれつ!と絶叫せる我中隊長の双の眼には早も鮮血迸りぬ。されども遂に能はず、我馬斃れ我刀折る、嗚呼止みなん哉。

中隊長の傍に侍して戦況を記するに余念なかりし我も、いつしか筆を投じて淋々の血涙に紙帳を湿しぬ。

顧みれば六尺の身幹憤然として立てる倉崎左翼士官が石の如き拳をあげて、萬?の熱涙を払うさまうたまし。喊声山又山に響きて、鞳?濃乎として天地為に震ふ時、砲煙をわけて響き渡る休戦の喇叭、撃方止め!の号令。雲行惨憺は万古に長し。

戦や七時半に起りて九時に終る、隊を寺領村小学校に集めて、村有志の饗をうけ、九時半再び発して道を日の谷にとり、以て仁多郡の山幽を踏まんとす。