第三高等学校の6

第三高等学校は今回にて終了
寄宿舎が三階建というのはなかなかないところだろう。ここに居れば図書館の蔵書も借りれるというところがすばらしい。
松江にはまだ無かったらしいようだが現在では、この時代運動場にしていた三の丸には県庁舎、その隣の「お花畑」に図書館がある。
「嶽水會」はどのように読むのだろうか。資料の中に絵はがきが有ったような気がするが記憶おぼつかなし。

寄宿舎は元の第三高等中学校の建築物を用ひ、頗る完全なるものにして、畢竟大学に譲り渡すべきものなり、即ち三階作にて下を自習室と、二階を寝室とし、三階は物置なり、一時は百名も入舎せしが現今は7、80名なり、

凡て自治制にして舎監の干渉を受けず、各自規約なるものを守ることとす、而して舎生は学校の書籍を借ることを得るの便あり、又運動をなすにも好都合なり、故に初めて京都に来りしものは殆んど入舎せり、素より自習時間等定めもなければ勉強家は非常に勉強し、又運動家は充分運動をなし得べし、当時舎費50銭食料4円20銭なり。


図書館
本校の蔵書を貯ふ所にして毎日午前7時より午後5時迄開放し、職員学生の閲覧を許す、故によく稀なる書籍又は高価なるものも此処に至りて見る事を得べく、殊に専門的の書籍も種々ある事なれば大に見開を広むる事を得、これ大に我々の便利とする所なり、殊に松江中学の如きは書籍を得るに比較的困難にもあり、且つ図書館もなければこの制度を設けられし方最も好都合ならんと信ず。


嶽水會
又本校には叡岳鴨水の名に因みたる嶽水會なるものあり、職員生徒間の組織に係るものして吾学友会と同種のものなり、年々春秋2回の陸上運動会と4、5回のぼーとれーすを行ふ、素より以前の三中時代の壬申会の盛大なるに比すべきいあらずといへども、猶盛大を極む、

翻て我松江に於ては籠手田知事一度去りてより以来、運動会の設ありしを聞かざりしや久し、幸にして昨年本会開設の際に当り盛大なる運動会ありしと聞き、吾輩大に之を喜べり、庶幾くは将来?之を実行して我が郷里の運動場裡をして盛大ならしめんことを切望の至りに堪へざるなり、


右は僅に閑を偸んで禿筆を叱して本校の概況を綴りしに過ぎず、其詳細の如きは他日を期して更に報告するの期あるべし、庶幾くは其意を取て其の文の拙なるは余が多忙中の作なりとして見咎め給ふことなかれ。