海軍兵学校の生活の12

旧制中学や旧制高校でカッター競技が有名だったのは、こういう軍事訓練の意味合いがあったせいだろうか。それとも欧米の大学の競技を見習って?
「端艇の新造」については、他の項に寄付金を募って一艇を新造した事業に関して経費其の他の事情をしるしたものがある。
今回で「日常生活」の記述は終り、今度は年間の行事関係に入る。

端艇は主として「カッター」を漕がしめ、又時に帆走をなす、新入生には、入学の初数ヶ月、毎朝毎夕之を漕がしめ、以て之に熟せしむ、「カッター」は大抵皆「ダブル、バンク」の12挺付にして、其「オール」の重くして頑固なること、尋常「レース、ボート」の比にあらず、蓋し海軍の端艇は、其速力の大なるを欲すると同時に、堅牢にして波濤に堪え、且つ帆走に適せしめんとするものなれば、其制も亦自ら異れり、「ギグ」とは「カッター」より一段小にして其形大「レース、ボート」に似たるものなるが、其製造の費用は、帆走の諸具を合せて、凡5
00金を要すといふ、


体操、柔軟体操、唖○(註 アレイ)体操、舶刀、拳銃、銃槍術、併行杆及水平杆等にして、逐次に之を習はしむ、又水曜、金曜には別時間に総員操練を行ふ、水曜日は砲術にして毎学年始より夏期休業までは、中隊教練、夏期休業より学年末までは砲台操練をなすを例とす、金曜日は運用術にして、帆前操練式は艦隊運動をなす、帆前操練は鳳翔に於て之を行ひ、或は艦長となり艦橋に立て総員に号令し、或は水兵となり?に登り桁に渉りて帆を操す、艦隊運動は、或は橈走を以てし、或は帆走を以てし、10隻の「カダー」を2小隊に編成し其運動は大率ね艦隊に傚ふ、


5時半食事、次で通常軍服に換ふ、金曜日は特に夕食後総員運動を催し、或は綱引、或は「フートボール」或は「ボートレース」等をなし各分隊大に勝優を競ふ、6時45分、定時温習となり、9時に終る、9時15分就寝、9時半館内の電燈を滅して、当直監事各室を巡検す、水曜の朝は銃器の手入れをなさしめ、監事之を検す、土曜の午後は各寝室及温習所の大掃除を行ひ、次で又銃器を磨く、此日の別科には各号交互射的を行ふ、日曜には校長或は監事長の人員調査、分隊点検、校内点検等を行ふことあり、夏期は別科後水泳を習はしむ。