日本人の3

畳を輸出していたのか?
米国式はたいがいペンキを塗って仕上げとするらしいが、そうでない日本家屋は不思議に見えよう。
豪華な調度品を並べて家具を見せ合い、というステイタスの見せ方からいうと、すかすかに見える室内。
徒然草をおもい出します。「夏を旨とすべし」だったっけ?

日本の家庭生活
教育するに最も宜ろしきは日本の家庭なり我々は一夜日本の家庭中にて生活せば非常の教育を受け得べし
日本の生活は甚だ質素単調にしてよし貧富の懸隔はありとすとも生活の方法は大概何れの地方も同様なり。余嘗て或家を訪問したりしがそは余程生計ゆたかなる家なりき、先づ人力車を雇ひしに車は直に目指し家に達したり、


家は二階造のペンキも塗らず木の箱のやうにて石の土台の上に立つ灰色の木の柱に支えられて黒き土製の瓦の世にも重げなる屋根あり、余等は一瞥して奇麗なる家内と後にある花園の美しき庭とを見ぬ、戸は日中は暖かければとて開け放ちたれば新鮮なる空気は隙間なく流通し得るなり。


人力車を下りるや下りずに全家の有様は一目に見らる全室はすべてここにありて見通しなれど我がアメリカの如き家具らしきものも見えず、日本人はテーブルも椅子も用ゐざれば更になし、殊に日本人は座り好きにて席は畳の上に布かれたる布団の上にあり家は総じて小奇麗なり前の道はよく掃除せられたり。


畳はアメリカに輸出せらるるものとは異なりて広さ三尺長さ六尺に織られ恰も本のやうにて黒き織物にて縁とられてキッチリと敷かれたれ床は墨にて縁とつたる嵌物を以て覆ひたるが如く日本全国何れの処にても大きさは等しけれは室の広さは長さ何尺巾何尺などいはずして床に敷かれたる畳の数を数ふれは明瞭なり、室を暖むるに暖炉も見えずまたそを隠すべき穴蔵も土間もなし家には煙突らしき物もなし、


日本人は体を暖むるには火鉢といふものを用ゐるこは小き銅縁の箱の灰の入りたるに木炭を一杯入れて火にせらるる仕掛なり、日本人は皆この同一なる貧乏仕掛を以て冬になれば重ね着して寒からぬ様したれば日本人は時候の寒くなればなるほど肥えて来るといふ訳なり然し日本人はストーブ無くして如何して炊事するか、彼等は粘土の竃にてその中へ木炭を入れて炊きて煮るなり。