武徳会の柔術試合の3

いよいよ柔術の試合がはじまる。ルールが皆目わからないのでこのあたりは特に解説なし。

終りて又々柔術仕合にかかりぬ数回の試合の後我先鋒村上氏出でたり、玉座に向うて一礼し立ち上るや敵は如何なる隙や見出しけむ飛び込むよと見えしが村上すかさずかき上げて美事一本(腰投の裏)又立ち上り揉み合ふ中一本勝負の命下り村上氏の勝とはなりぬ

手始めよしと岩田氏飛び出でたり、相手は大の髯男岩田氏の捨身は幾度か試みられしといへども敵は防御一図に立構へ遂に引分けの命下りぬ。


やがて呼び出しにつれて日森氏悠々と馬を中原に乗り出し、相手は小兵には候へど手は利いて居り候と静々と進み出で秘術を尽して争へしが日森氏の腰投に脆くも敵は斃れたり一敗に怒りし敵は勢鋭くたやすく勝負付くべうも見えず一本勝負の命下り日森氏の勝とはなりぬ。


次に出し石原氏は彼我伯仲の間にあり、初め石原氏の捨身効なく再度腰投又効せず、石原氏怒りて飛び入るよと見えしが電光石火特意の負投美事一本又立ち上り組合ふよと見えしが又も一本水車のごと誠に是れ当日中の見物なりき。