7号 波間の千鳥の5

さて第二日目の見物「職員競争」です。とくとご覧あれ。
「髪」とあるのは「髯」の間違いか。

第12回 職員競争
  舵手   整調 五  四  三  二   一
白 秋山校長、後藤、小島、溝邊、引野、佐々木、花澤、
赤 西村教頭、西村(昴三)、原巽、羽山、内田、中村、高井、
当日唯一の見物なり「君途中でレヲンかなけれや到底やりきれないで」と云ふ手合にて中々滑稽のレースなり御気の毒にも亦例の風が出でて先生方には少と困難なりしか仕方なければ殊勝にもスタート迄漕き給ふに一体なら覇気眉宇に表はれ形容すべき所眉は動かずして八字髪のブルブルと振ひしは抑も滑稽の第一着なり先生は真青にて極く極く真面目なり

スタートにて滅砲に驚きまぎれに総身の力を振つて漕げはさすかに船も進みしに御気の毒にも赤のボート船首風の為め南に向ひ居たる故方角違に進むを舵手は北に廻はさむと為し給ふを風にて中々首は廻らず白にては校長は近眼にておはしますを舵に当りて破れし波か眼鏡に当りてグラス曇り加之ゴールはかすかに見へる故決勝点の旗は中々見えず白と反対に北に向ひてボートは進むを平気の平左ですまし給ふに

赤白の選手は方向は親分の受持なりと安心して一心に漕ぎ給へば腕は棒の様になりて人の腕か自分の腕か分からぬ位なるを尚ほ我満して歯を食ひしばりさすがに額に青筋は出でざれども鼻髪に露か落ちる程の漕き方、他の方には両方の舵舵船首を漸く正当の方に曲げホッと先あ安心と云ふ体裁罪な話しなれと知らぬ顔して舵をぐーっと曲げたる事故ヲールは一時に重くなり疲れし腕には非常にこたへて最早調子も何もあった者にあらず人は人己れ は己れで乱調も此処に至りて極まれりなりしか決勝点近くに至り急に力を入れしに白の二番アット云ふと腹切り

先生も中々考へ手なり後になりてヲールを見勝は此方の物とヲールヲ其儘にし給ひしも之れ滑稽の14分30秒を以て白の勝


第13回 風益々荒れしが押して挙行しぬ
赤 4年
白 5年
スタートにて舟の中に水が入り少し紛擾ありしが遂に挙行する事となり号砲と共にスタートを出でたりされと中途にて白の艇に水余り多く漕ぐを得ずして止めしが今更中止すべくもあらざれば赤は猛勢を以て決勝点に入れり4分30秒