ヴィズ・ゼロ

生命の星・エウロパ (NHKブックス)  ヴィズ・ゼロ  The Burning Wire (Lincoln Rhyme Thrillers)



「生命の星・エウロバ」  長沼毅 NHKブックス992 日本放送協会 ISBN:4140019921 C1344

「ヴィズ・ゼロ」  福田和代 青心社 ISBN:9784878923364 C0093

「The Burning Wire」  Jeffry Deaver ISBN:9781444704280


下手なSF作品より夢のある科学の本。「エウロパ」とは木星の衛星のひとつ。
生物が産まれるための環境とはいかなるものか、という視点から説き起こされる「生命が誕生し進化するということ」の意味。
惑星の中心にマントル対流が生じる原因から、「呼吸」と「代謝」の科学的仕組みなど、絶対読んで損はしない。
多分この知識を基礎にして「生物学」というものがまた知識の堆積として発展して行くのだろう。
この著者の文章は読み易くかつ理解し易いので助かります。


「ヴィズ・ゼロ」
目黒考二お勧めの作家。毎回全然違う分野を舞台に書いているのだそうな。
しかし、読んでみて驚くのは「いきなり出て来て傑作」なこと。今まで単に食わず嫌いだったためといわれそうだが、文句なしのエンターテイメント。普通は結構微妙なんですよねこういうタイプのお話。が、嘘くささも破綻も無いという凄い技。
高村薫を初めて読んだ時のような興奮であります。
ぼちぼち、この作家探して読もうか、それとも射程内の「おとりおき」にしておくか悩みの種。


「Burning Wire
なんて怖いんだ!スチールだらけの建築物、と思って周りを見回したらうちはこてこての日本家屋だった。
すなわち床は畳=絶縁体だらけ。漏電して火災という方が可能性高し。(笑)
扉も床も階段も窓枠もインテリアすべてスチール製だったら、建築物の端っこに高圧電線接触しただけで内部の人間すべてもれなく感電する。しかも直接高圧電力かけるとスチールが融解して「散弾」となり飛び散る。
おっそろしい話なのであった。キングに匹敵するホラーやもしれぬ。
とまあ、こんな恐ろしいことをする犯人相手にライムたちが出動する。デイーヴァーだけあって息をもつかせぬ展開。とくに後半にあってはもうトイレに行く時間も惜しみたくなるよなジェットコースター状態。
邦訳されたあかつきは、これを読み出す前に必ず時間を確保すること。文字通りの徹夜本なので滅多な時間に読み出すと読み終えるまでに「つづきを読みたい、でも読めない」という葛藤で酷いことになるので注意。
ここまで煽っておいて内容は解説しないのかよ!といわれそうだが、下手にネタバレするとファンに首締められる。